質問 |
答弁 |
生活保護について
基準引き下げへの見解
≪鈴木努≫最初に生活保護についてお伺いします。国は、生活保護費を2013年に10%引き下げを実施したのに続き、今回食費や光熱費にあたる生活扶助費を10月から最大で5%引き下げ、総額210億円を削減する方針を決めました。しかも、扶助費を削減する理由に生活保護を利用していない一般低所得世帯との均衡を図るため引き下げるとしています。今回の政府の計画は、憲法が否定しているはずの「劣等処遇」のへの逆行となるものではないでしょうか。
劣等処遇は、19世紀イギリスの貧困救済制度で原則とされた、救済する人の生活は最下層の労働者以下とするという差別的な考え方で救済を受けることを遠ざけようとするものです。日本で終戦後にできた旧生活保護法も生活水準を低く押しとどめる劣等処遇の考え方を示していました。しかしその後日本国憲法で、すべての国民に「健康で文化的な生活を営む権利」を国が保障する義務があるとされ、政府はこれを受け、旧法を全面改正し、現行の生活保護法を制定しました。
現行法の制定に携わった小山進次郎氏(当時の厚生省社会局保護課長)現行の生活保護法を解説した著書「生活保護法の解釈と運用」で現行法で保障する「健康で文化的な生活水準」とは単に、「辛うじて生存を続けることを得しめるという程度」ではなく、「少なくとも人間としての生活を可能ならしめるという程度ものでなければならない」と説明しています。政府はこうした考えに基づいて、生活保護基準については全国民の平均的な生活水準との比較を重視し、一般勤労所得者世帯の消費水準の6割程度を目標に掲げて基準が引き上げられてきましたが、2000年代にはいると徐々に低所得世帯との比較を重視する姿勢に変化してきました。
基準を低いほうへと向かわせる今回の引き下げは、憲法25条を受けて現行法ができた経緯を無視したものと思いますが、市長はいかがお考えでしょうか。憲法25条の考えに立ち返った制度としていく必要があると思いますが、市長のご所見をお伺いします。
生活困窮者自立支援・家計相談について
生活困窮者自立支援法のおける家計相談についてお伺いします。家計相談は、2015年に創設された生活者自立支援制度のメニューの一つで、収入があってもお金の管理が苦手な人や多重債務を抱える人等に対し、専門の相談員が家計の現状を聞きとり、相談者の抱える課題を把握し、生活の見通しを立てることで自立につなげていく事業となっています。
ただし、この事業については自治体によって実施するかどうかを決められる「任意事業」となっており、財源や人材確保等の問題から2017年では、全国の約363自治体で実施しており、全体の40%の実施にとどまっています。家計の「見える化」や自立を支援するという点では、本来必置とするべき事業と思いますが、いかがでしょうか。また家計相談の必要性について当市ではどのような認識をお持ちでしょうか、お伺いします。
この間、生活保護をうけている方から生活費のやりくりについて相談を受けました。保護費の受給日の1週間前くらいから「生活費がなくなり困っている」とのことで市にも家計管理に関する支援ができないものか求めたところであり、市社協などの他の機関にも支援の相談をしましたが、「日常的な家計管理ついては行っていない」とのことでありましたが、お金の管理がなかなかうまくできない生活困窮者や生活保護を受給している方についても日常的な家計管理について相談できるような体制づくりを当市でも検討できないものでしょうか、お伺いします。
国は、自立相談、家計相談、就労準備の各事業の一体的実施を促進するとして、両事業を連続的・一体的に実施した場合には、家計相談事業の補助率を現行の2分の1から3分の2へと引き上げ、さらに生活保護者への家計相談を強化する検討をしているようですが、自立相談や就労準備に継続的に取り組まれてきた当市としても家計相談の補助率があがる対象となると思いますので、設置に向けた前向きな検討をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか、お伺いします。
生活困窮者支援庁内連携会議の実績
この項の最後に生活困窮者の対策について党市議団では、相談事業の充実のため、滋賀県野洲市の「債権管理条例」「暮らし支えあい条例」に学び相談体制の充実を求めてきました。当市では、今年の2月に生活困窮者に関する20部署による庁内連携会議を立ち上げ、生活困窮者支援の取り組みなどについて勉強会を行い、定期会議の開催などしていくとのことでありましたが、各部署の連携のもとで支援に至ったケース等はこの間あったものでしょうか。お伺いします。
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《市長答弁》 今回の生活保護基準の引き下げについての見解についてでありますが、生活保護制度は、国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する、最後のセーフティーネットの役割を果たす社会保障制度でありますことから、法律の規定に基づき、国が適正な生活水準を定め、保障する必要があるものと存じております。
今回の引き下げにつきましては、平成25年8月に続いての引き下げとなり、当市においても、生活保護を受給している方の大部分が引き下げとなりますことから、生活における影響は少なからずあるものと存じておりますが、高齢単身世帯や多人数世帯における引き下げの影響が大きくならないように、引き下げ幅を5%以内にとどめ、3年間で段階的に引き下げることとされておりますものの、中間年である31年に予定されている消費税引き上げに対応した新たな措置など、今後の国の動向を注視してまいりたいと存じます。
《保健福祉部長答弁》
生活困窮者に対する家計相談についてでありますが、相談者に家計の状況を理解していただき、自ら家計を管理できるようにするとともに、家計に関する課題の解決につなぐことを目的としており、生活困窮者の自立に向けて相応の効果があるものと認識しております。
次に、日常的な家計相談のための体制についてでありますが、現在は、家計支援が必要な場合は、盛岡市社会福祉協議会で実施している「日常生活自立支援事業」の「日常的金銭管理サービス」により対応しているところでありますが、高齢者等の相談が増加しており、新たな体制づくりが必要と認識しております。
次に、家計相談事業の実施についてでありますが、生活困窮者自立支援法の一部改正を受けて、当市の生活困窮者支援の実効性を高めるためには、どのような取組が必要か検討する必要があるものと存じております。
次に、庁内連絡会議により、各部署の連携の下で支援に至ったケースについてでありますが、事例はまだありませんが、連携会議の設置後、各部署から盛岡市くらしの相談支援室に、積極的につなぐ動きが見られるなど、効果があらわれて来ているものと存じております。
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日常生活自立支援事業について
職員体制の充実
次に日常生活自立支援事業についてお伺いします。日常生活自立支援事業は、高齢の方や障害をもった方が地域で安心して生活が送れるよう福祉サービスの利用手続きの援助や代行、それにともなう日常的金銭管理等を行う事業です。この事業について、当市では、委託事業として市の社会福祉協議会で実施されています。援助内容としては、福祉サービスの利用手続きや情報提供と助言、福祉サービスの利用料の支払いや日常的な金銭管理サービス、苦情解決制度の利用等の援助や書類等の預かりサービスが行われています。
平成29年度の新規利用は32人で、現在198人の方が利用し、これまでの契約者数は583人となっています。盛岡市管内での特徴としては、知的障がいや精神障がい者の方の利用が多く、中でも10代の利用者が増えてきているとのことであり、精神障がい者が増えている背景には、「他の自治体に比べ盛岡市の精神科の病院施設の充実しているのからではないのか」とのことで、他自治体からも盛岡に移住してこの事業を利用する方が増えてきているそうであります。
現在この事業は、専門員や生活支援員の方が5名体制で支援を行っていますが、新規契約者数の増加により、支援員一人当たりの適正数といわれている35人を超える状況となっている中で、職員体制の充実について検討していくべきと思いますが、いかがでしょうか。この事業については、国、県の補助事業となっていることから県や国に対して増員の要請を行っていただきたいのですが、いかがでしょうか、お伺いします。
成年後見人制度の利用促進
日常生活自立支援事業のように認知症の高齢者や知的障がい者、精神障がい者など、判断能力が不十分な成人の財産管理や契約、福祉サービスの利用契約などについて、選任された成年後見人が代理して行う成年後見制度があります。当市でも成年後見人の制度の周知や市民後見人の養成などの取り組みが行われており、担当課の頑張りにより、高齢者の成年後見の市長申立て件数も以前に比べ大幅に増えている状況にあります。
日常生活自立支援事業の内容についてお話を伺う中で、知的障がい者や精神障がい者が増えてきているとのことであり、日常生活自立支援事業の契約者の中にも成年後見制度の対象となる方がいるとのことでありましたが、障がい者の方の成年後見制度の利用について当市ではどのように進められてきたのでしょうか。また制度の積極的な活用について今後どのように取り組まれていくのか、お伺いします。合わせて障がい者の方の成年後見制度の市長申立て件数についてどのような状況となっているのかお知らせください。
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《保健福祉部長答弁》
次に、盛岡市社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業における職員体制についてでありますが、5人の支援員が、盛岡地域1市2町の利用者198人を支援しており、一人当たりの契約者が、国が定めている契約者の基準である35人を超える40人となっていることから、当市としても県と相談してまいりたいと存じます。
次に、障がい者の成年後見制度をどのように進めてきたかについてでありますが、家族申し立ての場合は、NPO法人「成年後見センターもりおか」を紹介しておりますし、本人、配偶者及び四親等以内の親族からの申し立てが難しい場合は、市長申し立てを行っております。
次に、成年後見制度の今後の取組についてでありますが、盛岡市基幹相談支援センターなどと連携して、制度の利用が必要な障がい者の把握に努め、支援してまいりたいと存じます。
次に、障がい者の成年後見制度の市長申し立て件数についてでありますが、25年度から28年度までは各1件、29年度からは0件となっております。
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空き家について
固定資産税の軽減解除の実績
次に空き家についてお伺いします。空き家の問題が当市でも大きな問題となっている中で、2015年に「空き家対策特別措置法」が全面施行されました。特措法では、「特定空き家」にされた住宅について、所有者に解体や修繕などを勧告・命令できるようにし、命令に応じない時は、自治体が所有者に変わって取り壊し、費用を所有者へ請求することも可能としました。また地方税法では、空き家の解体がなかなか進まないことを背景に、特定空き家の所有者が自治体などの勧告などに従わない場合に、住宅が建っていても固定資産税の軽減措置を打ち切ることが出来るようにしました。
これまで住宅が建てられたままですと小規模住宅用地では、固定資産税の課税標準額の6分の1、一般住宅用地ですと、3分の1に減額措置が取られてきましたが、当市では、軽減措置が解除された空き家は何件となり、空き家の解体に至った件数はどのくらいとなっているのか、お知らせください。
「特定空き家」以外への対応
市民の方からは、地域で空き家が放置されていることから「建物を解体した土地の方を軽減するべきではないか」との声も出されている所ですが、東京都荒川区のように、1981年5月31日以前に建築された木造建築物といった条件に当てはまる建物を除去する場合には、その後5年間の土地の固定資産税や都市計画税の80%を減免する等、特別の措置を講じて当市でも特定空き家以外の空き家の除去について対策をとっていく必要があると思いますが、いかがでしょうか、お伺いします。
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《財政部長答弁》
特定空き家等への勧告に基づき、固定資産税の軽減措置を解除した件数についてでありますが、0件で、また、それにより解体に至った件数も0件であります。
《市民部長答弁》
特定空き家以外の空き家の除去に関する対策についてでありますが、本市では、平成29年度から開催している不動産の専門家による無料相談会において、建物付きで土地を売却し、購入者が解体する活用法をはじめとした管理・処分の仕方等の周知や、早期の空き家等の処分につながる「相続した空き家の譲渡所得の特別控除」のお知らせなど、所有者が空き家を放置することなく、自主的に処分できるよう、きめ細やかな支援を行っているところです。
今後におきましても、ご指摘の荒川区の例をはじめとした、他都市の事例を参考にしながら、効果的な対策につなげてまいりたいと存じます。
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動物愛護センターについて
次に動物愛護センターについてお伺いします。近年の動物愛護思想の高まりの中で、平成25年には、動物愛護法の改正、平成26年に「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」の発足により、終生飼養、犬や猫の返還・譲渡の推進、殺処分ゼロ、動物愛護センター設置等の動物愛護施策が全国で推進されています。また県内では、保健所による犬・猫の譲渡事業、動物愛護団体による譲渡会、ボランティアや一時預かり等の取り組みが行われており、東日本大震災や本県で発生した台風10号における対応においても、ペット同行避難、ペットの一時預かり、ボランティア活動等、改めて災害時における動物救護の重要性が増してきている状況にあります。
岩手県では、平成26年3月に「第2次岩手県動物愛護管理推進計画」を策定し、施設整備について「動物管理施設のあり方や動物愛護業務を集約的に行う施設の必要性については、動物愛護団体と連携して行う譲渡事業の進捗状況や県土が広い岩手県の特性等を考慮し、中長期的な課題として検討していく」としています。三ツ割にある保護施設を始め、県内の動物管理施設は、築30年から40年経過し老朽化が進んでいる状況となっており、さらにこれらの施設はもともと狂犬病予防法に基づく犬抑留施設となっていることから動物愛護の普及啓発に対応する施設とはなっていませんでした。このような中で平成29年6月から動物愛護センター設置の在り方を含めたワーキンググループ会議が開かれ、動物愛護管理施策の方向性や動物愛護のありかたについて「提言書」としてまとめられています。このまとめられた提言書と今後の動物愛護センター設置についての方向性について何点か質問します。
設置場所・運営方法について
動物愛護センターの必要性については、これまで動物愛護施策の推進や動物愛護の教育や普及啓発、命の大切さや適正飼養を指導する等の拠点施設として設置が求められてきたところであり、同センターが設置された際に担う機能についても大きな期待が寄せられているところです。県内では初めての、そして県と市共同での設置が検討されている中で、岩手県のように広大な県土を有する地域性として、その特徴にふさわしいセンターの設置が必要と思います。その一つとして設置場所についてでありますが、提言の中では、「交通の便が良く、盛岡市近辺でもICの近くなど車で行きやすい場所」「駐車場が広く、学生ボランティアがバスや電車で通いやすいところ」「競馬場、動物公園、鳥獣保護センターなどの近くでは、犬などの鳴き声が響くのはそぐわない」等の意見が出されています。また専門家の意見では、「動物公園の近くに設置となると野生動物とペットとの病気の問題について心配なところがある」との声もあります。センターが設置されれば、県内からも多くの人が訪れることが予想されますが、多くの方が行きやすい、利用しやすい施設として場所の選定についても検討が必要と思います。過日行われた全員協議会で、盛岡市動物公園公民連携事業として株式会社オガールと契約した岩山南公園を活用した観光振興及び活性化のための基盤整備調査業務について、動物愛護センターの岩山エリアへの設置の可能性も検討しているとの説明がなされたところでありますが、身近に感じられる施設として、他の設置場所についても探していく必要があると思いますが、いかがでしょうか。京都市の動物愛護センターは、京都駅からも近く、街中に設置されており、多くの方が訪れやすい市民からも身近な施設として利用されています。このような事例を参考としながら、市のセンターの設置場所についても検討していただきたいと思います。
次に運営方法についてでありますが、提言書の中でも強調されているように動物の管理については命ある動物を扱うものであり、様々な予想外の事態に対して、対柔軟な対応が求められていることから、全面委託ではなく直営での運営としていくことが望まれますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。これまで市や県が培ってきた動物愛護施策に対する様々なノウハウを活かしていく上でも業務委託はするべきではないと思いますが、いかがでしょうか、お伺いします。
センターの担うべき役割
最後に、センターが担うべき役割として、動物の生きる力、動物とのふれあいや譲渡、災害発生時の動物救護の拠点、殺処分などの暗い部分など、命を大切にする心を育てるような施設として、重要な施設となると思いますが、子どもからお年寄りまで命の大切さに学ぶ施設としてどのような役割を果たそうとしているのか、お考えをお聞かせください。またセンターが担うべき機能についてどのような構想をお持ちでしょうか、お伺いします。 |
《保健福祉部長答弁》
動物愛護センターの設置場所についてでありますが、基本構想の中で、犬の鳴き声による騒音苦情への配慮や感染症対策への十分な措置を第一とし、他に県民から分かりやすく親しみのある場所、交通アクセスの良い場所などを想定される要件としたところであります。
次に、施設の運営についてでありますが、当該施設では県と市が、狂犬病予防法及び動物の愛護及び管理に関する法律に基づく行政事務を執り行うこととしており、専門的な知識を持った獣医師等の職員配置を想定しております。
《市長答弁》
次に、動物愛護センターの果たすべき役割についてでありますが、動物のいのちを尊重し、返還・譲渡の推進により、殺処分ゼロを目指すとともに、命の大切さや、共に繋がり支えあう心を育む施設にしたいと考えております。
また、多くの方が利用できる開かれた施設とし、多くの団体やボランティアと協働して、動物愛護の活動に取り組んでまいりたいと存じます。
次に、センターが担うべき機能についてでありますが、30年4月県と共同で策定した「岩手県動物愛護センター(仮称)基本構想」の中で、「動物愛護思想の普及」、「適正飼育及び飼い主のいない猫対策の推進」、「生存の機会の拡大」、「人獣(じんじゅう)共通感染症対策と調査研究」、「災害発生時の動物救護」の5つの機能を持つ施設とすることとしているところであり、「人と動物が共生する社会の実現」に寄与する拠点施設を目指してまいりたいと存じます。
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