1、 盛岡市子どもの未来応援プラン(案)について
プラン取りまとめの基本
過日の全員協議会において、「すべての子どもが将来に希望を持つことができるまち・盛岡の実現」を基本目標とする盛岡市子ども未来応援プラン(案)(以下「応援プラン」)が示されました。
この間、党市議団としても子どもの貧困問題及びその解決にむけ議会で取り上げてきたところでもあり大いに歓迎し期待したいと思います。
「応援プラン」は「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現する」とした基本理念のもとに、先ごろ実施された「盛岡市ひとり親世帯の子どもの生活実態」調査で得た新たなニーズへの対応など総合的な支援計画であること。また、子ども・子育て支援事業計画に位置付けられている「ひとり親家庭等への支援の充実」の具体化を図る内容としたとのことです。
私は、6月議会で、支援計画の策定にあたって「ひとり親世帯の子どもの実態調査結果」を反映させ、思い切った予算措置を行い、盛岡モデルとなるような支援計画の策定をと求めました。このたびの「応援プラン」には「実態調査結果」がどのように反映されたのか。思い切った予算措置という点ではどのような配慮がされたのか、支援施策の特徴的な点など示しください。
「応援プラン」は、これからの子どもの貧困対策は、積極的な人材育成と位置付け、社会的孤立の防止と教育や生活にも目を向け、借金、DV、虐待などの複合化する問題の解決を図りながら困窮世帯を包括的に支えていく支援であること。経済的自立、教育機会の確保、社会的孤立の防止、支援情報の確実な提供が求められているとし、これらの課題解決に向けて計画的・総合的に推進するとしています。
非常に重要な指摘であり具体化が急がれていますが、以下何点かについて伺います。
包括支援の体制
1点目は、包括的に支える支援ということは、多分野、多機関、多職種にわたる支援が求められるわけで、効果的に行うためにも庁内外の関係機関、関係者の密接な連携が不可欠と思いますが、どのような体制を検討しているのでしょうか。
この間、児童手当現況届の受付会場に多機関の出張窓口の設置を行うなどの改善・拡充が図られたことは評価したいと思いますが、加えて希望の多い就業支援や技術習得、資格取得への支援などは、専門性の確保と相談支援体制の質・量の充実を図るべきと思いますが、この点ではどのような対応・検討がされていますか。
経済的支援
2点目は、経済的自立に向けた支援(負担軽減)です。
過日の全員協議会でも意見が出されましたが、「応援プラン」にはすでに実施されている事業が並べられ、新規事業については今後の予算次第ということです。
予算措置に向け期待に応えられるよう全庁的に検討するとのことですが、特に喫緊の課題でもある以下の点について伺います。
①準要保護生徒への追加3品目の支給について、未実施となっている小学校の新入用品費の入学前支給、中学校クラブ活動費、小学校のクラブ活動費、生徒会費、PTA会費への支給についてどのような検討をされていますか。
中学校クラブ費では、県内14市で未実施となっているのは盛岡市、宮古市、久慈市の3市のみとなっているおり早急に対応すべきではないでしょうか。
② 放課後の過ごし方では、ひとり親世帯の子どもの生活実態調査によると3人に一人の子ども(32・4%)が放課後一人で過ごしている実態が明らかになりました。
放課後の居場所がもっとも必要とされるひとり親世帯の子どもたちが孤立傾向にあることは明らかです。
子どもの貧困対策については、学校とともに保育所、学童保育クラブが支援の重要なプラットホーム(特別な配慮を必要とする子どもたちへの支援が可能)と位置付けられていますが、保育料がネックで入所を断念する事態になっているのではありませんか。実態についてはどのように把握されていますか。
ひとり親世帯及び低所得世帯の子どもたちの孤立を防ぐ居場所のひとつと位置づけ、保育料の負担が重くて入所をあきらめることのないよう、市の責任で学童保育クラブの保育料の軽減を図るべきではありませんか。
未来基金~教育の機会均等へ充実を
3点目は教育機会の確保及び子ども食堂への支援強化と裏付けとなる「子ども未来基金」の活用ついて伺います。
市長は、先の6月議会において子どもの貧困対策について「子どもの将来が生まれ育った環境で左右され、閉ざされることのないよう、その生育環境を整備することは市の喫緊の課題である」と述べられましたが、特に、貧困を理由に大学など高等教育への進学機会が閉ざされている課題についてはどのような検討をされたのでしょうか。
児童扶養手当現況届時の相談事業でもその多くが進学と費用への相談内容であったということからもこれらへの真剣な対応が急がれているのではないでしょうか。
国や育英会による給付型奨学金制度等はあるものの、市の「応援プラン」に具体的な支援施策がなかったのは残念です。
過日、市議会教育福祉常任委員会が、富山市の「福祉奨学資金給付事業」について視察・研修して参りました。
この事業は、奨学資金を給付することで高校卒業後の進学を支援するとともに、資格免許等の取得により就業を促し、貧困の世代間連鎖を防ぐことを目的に、平成27年度に生活保護世帯の保護者・子どもと児童養護施設の入所者に、平成29年度からは、ひとり親世帯の子どもを対象に、国家資格取得と県内の大学、短大、専門学校等への進学を条件に支給しています。
所得制限はあるものの、生活保護世帯と児童養護施設入所者には、入学金30万円以内、学費は年間50万円以内、生活資金月額4万円を支給。ひとり親世帯には、入学金10万円以内、学費は年間17万円以内を支給しています。
生活保護世帯では29年度まで4名の方が利用しており、ひとり親世帯は29年4月入学時で10名の方が利用しているとのことです。
実はこの事業は、富山市長の選挙公約でもあったということで、財源は、市長自らが先頭に立ち企業・個人から寄付を集め「富山市福祉奨学基金」を立ち上げ、現在残高は1億9千4百万円ということです。
この基金は、貧困の世代間連鎖を防ぐことを目的にひとり親家庭など困窮世帯への支援に特化した使途目的になっているということです。
市の「応援プラン」を進めるにあたって一考に値するのであり、今日の貧困対策が積極的な人材育成ということからしても、市の積極的な支援施策が求められていると思いますが、富山市の事業と合わせて市長のご所見をお聞かせください。
市の子ども未来基金は、子育て支援全般に関する事業への支援となっており、過日の活動報告会でも発表されたように多彩な活動内容でもあり、これら市民、民間、企業等の活動に敬意を表したいと思います。
一方、今日の子どもの貧困対策が積極的な人材育成と位置付けられ、子どもの社会的孤立を防ぐということからすれば子ども未来基金の活用についても子どもの貧困対策としての新たな柱立てが必要なのではないでしょうか。この点ではいかがですか。
子ども食堂への支援
社会的孤立を防ぐ課題の一つに子ども食堂の設置促進が言われています。
私ども党市議団は、7月に滋賀県内で急速に拡がっている「子ども食堂」について長浜市社会福祉協議会を訪問してお話しを伺ってきました。
滋賀県内の子ども食堂は、平成27年8月からモデル事業として開始以来、わずか2年足らずで現在66カ所に拡がっています。最終的には県内300の小学校区に1カ所の設置を目標にしているとのことです。
それぞれの実施主体はボランティアグループ、任意団体、NPO法人、地区社協、会社組織など多岐にわたり、垣根のない居場所として食堂を通じさまざまな世代がつながり、困っている人を放っておかないあたたかい地域づくりをめざす食堂づくりがすすめられています。
何よりも急速に拡がった背景には、滋賀県内の社会福祉法人・個人等で設立した「滋賀の縁創造実践センター」が、センターに参加する団体からの出資金及び県の補助金を主な財源として、子ども食堂への補助制度を創設し、県・市民に呼びかけたことです。
補助金は、初年度20万円、次年度から10万円の3年間で、実施にあたっては地区社会福祉協議会が実施主体となって、団体・個人に対してきめ細かい支援を行っています。
主な支援内容としては、子ども食堂開設準備講座や研修会の開催、開設にあたっての場所の確保、チラシの作り方、実際の運営のお手伝い等々を行っています。
補助金の交付や精算でも面倒な手続きは廃止し、例えば補助金が余っても翌年度への繰り越しを可能にするなど支援のハードルを低くしています。
子どもたちの居場所づくりはもとより、地域で共に支えあう「地域力」を引き出し、依拠したこれらの取り組みは大変刺激的で、子ども食堂を拡げる上での確信になりました。
市「応援プラン」には、唯一の新規事業として子ども食堂ネットワーク化推進事業が取り上げられましたが、設置促進や支援施策について触れられなかったのは大変残念です。
市内には11月に開設した東松園小学校区おひさまキッチンを含めて6カ所の子ども食堂が開設さているとのことですが、子ども食堂の位置づけや目標設置数など今後の方向性についてお聞かせください。
この間、「東松園小学校区おひさまキッチン」開設に関わってきた者としての経験からは、開設にあたっての最初の難関は責任の主体がどこなのかということでした。とりあえず市や市社会福祉協議会が相談に乗っていただいているということで認知を得ましたが、同時に活動資金をどうするのかということが大きな課題でした。
おひさまキッチンは、社会福祉法人が地域貢献策の一環として支援の申し出があり開設にこぎつけることができましたが、開設のノウハウ、危機管理、安全対策、食物アレルギーへの対応等々すべて手探り状態での準備でもありました。
開設にあたっては24名の方がボランティアへの協力の申しでがあり、「地域の力(地域力)」をあらためて実感したことは大きな喜びであり財産になりました。
当市においても「滋賀の縁創造実践センター」が進めるような支援や体制があれば意欲のある方への後押しともなり、地域力を引き出す力になることは間違いありません。市の積極的な支援を求めるものですが、いかがでしょうか。
その際、活動資金の確保では、先にも述べましたが、子ども未来基金について子どもの貧困対策に特化した使途目的についても検討いただきたいと思いますが、いかがですか。同時によりハードルを下げて活用しやすいものに工夫・検討が必要ではありませんか。
専門職の配置
最後に、「応援プラン」推進にあたって庁内外の多様な機関・職種との関係調整などでより専門性が問われていますが、これら包括的支援の中核となる専門職員の配置などについては検討されているのでしょうか。伺います。
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《子ども未来部長答弁》 応援プランへの「盛岡市ひとり親世帯の子どもの生活実態調査」結果の反映についてでありますが、本プラン案を取りまとめるに当たっては、生活実態調査に携わった研究者にも参加していただき、調査で得られた知見を反映させたものであり、各種支援策の情報提供や相談体制の強化、地域・関係機関等との連携の強化などに取り組むこととしたところであります。
次に、予算措置及び支援施策の特徴についてでありますが、課題の緊急性を踏まえ、本プランの取りまとめ作業を進めながら、可能なものについては先行的に取り組んでおり、児童扶養手当の現況届受付会場における相談体制の充実や、盛岡市民生児童委員連絡協議会、学校などが連携した困窮世帯に対する食糧提供活動への支援などに取り組んでいるところであります
さらに、新規事業や拡充事業について検討を進め、必要な方に確実に支援が届くような取組の強化に努めてまいります
包括的に支える支援を効果的に行うための体制についてでありますが、現在、他分野、他機関、多職種にわたる組織として、「盛岡市要保護児童対策地域協議会」が、児童虐待の早期発見・早期対応を図っているほか、複合的な課題を抱える方に対する支援を強化するため、市と盛岡市社会福祉協議会が中心となって、新たな他機関の協働体制の構築を進めているところであり、これらの組織の専門性を活かしながら、包括的な支援体制の構築に努めてまいりたいと存じます
また、就業支援や技術習得、資格取得への支援などについてでありますが、平成29年度には、児童扶養手当現況届の受付会場において、ハローワークと、市の相談窓口を一体的に開設し、福祉と就労の専門機関が連携してひとり親の就業や資格取得相談に取り組んだところであり、今後におきましても、このような取組みの継続・充実を図りながら、適切な支援を行ってまいりたいと存じます
《教育部長答弁》
準要保護児童への小学校の新入学児童生徒額用品費の入学前支給についてでありますが、小学校入学対象者への周知方法や承認事務等について検討しており、早期実現に向けて取り組んでいるところであります。また、中学校の入学前支給については、平成29年度内の実施に向けて取り組んでいるところであります
未実施となっている、準要保護児童生徒への追加3費目の支給についてでありますが、学校生活において広く負担を求められ、援助の効果が見込まれる費目を判断しながら、段階的な導入を図ることとしております。
次に、中学校のクラブ活動費についてでありますが、中核市党の先行自治体の事例や、市内中学校の実態調査を踏まえながら、支給に向けた検討を引き続き行ってまいりたいと存じます
《子ども未来部長答弁》
次に、放課後児童クラブの保育料負担のため、入所を断念する実態についてでありますが、「盛岡市ひとり親世帯の子どもの生活実態に関する調査」において、塾や習い事をしていないのは経済的な理由が最も高いことは把握できましたが、「子どもの放課後の過ごし方」の実態に対し、理由は調査項目に入れておりませんでしたので、今後、児童扶養手当の現況届提出時に実施している相談窓口などを通して、把握してまいりたいと存じます
次に、放課後児童クラブの保育料の軽減についてでありますが、「盛岡市子ども未来応援プラン」において、「貧困を解消する」のアクションでは、保育所保育料の軽減や高等学校授業料等の減免などを掲げているほか、民間の放課後児童クラブが自主的にひとり親世帯に対して減免を実施していることを踏まえ、今後、ひとり親世帯を含め、居場所を必要とする支援策を検討してまいりたいと存じます
《市長答弁》
貧困を理由に高等教育への進学機会が閉ざされている課題についてでありますが、本プラン案は、庁内関係部署で構成するワーキンググループにおいて、これまでの市の取組の成果と課題を整理したほか、子どもの貧困対策に関する専門家や盛岡市子ども・子育て会議からの意見を聴取し、取りまとめたものであり、いずれの検討段階におきましても、教育機会の確保が、重要な課題であるとの意見が得られたことを踏まえ、本プラン案では、「貧困によって子どもの可能性が奪われないようにする」をアクションのひとつに掲げ、学習支援などを重点的に推進することとしたものであります
次に、積極的な支援施策と富山市の事業についてでありますが、貧困の世代間連鎖の防止のみならず、人材育成の観点からも、就学資金の給付や、無科の学習支援などにより、教育費の負担を軽減することは、効果的な施策であると認識しており、富山市の「福祉奨学資金給付事業」につきましても、生活保護世帯やひとり親家庭が、将来に希望を持つための大きな支えになっているものと存じております
次に、子ども未来基金の子どもの貧困対策への活用についてでありますが、子ども未来基金におきましては、子どもの貧困対策を推進する観点から、「家庭環境、生活環境等に問題を抱える子どもが安らぎ、又は安心して過ごすことのできる場の提供に資する活動」を重点的に支援することとし、補助額及び補助率を一般の事業よりも引き上げる対応をとっているところであります。
今後におきましても、子ども未来基金を効果的に活用しながら、盛岡市子どもの未来応援プランを着実に推進し、すべての子どもが将来に希望を持つことができるまち盛岡の実現を図ってまいりたいと存じます
《子ども未来部長答弁》
次に、子どもの食堂の今後の方向性についてでありますが、子どもの食堂の取組は、地域で子どもを見守り、必要に応じて、適切な支援につなぐ入口となりうるものであるとともに、子どもにとっては多様な大人との出会いの場になるなど、子どもの貧困対策の推進において、今後も、重要性を増してくるものと認識しており、目標設置数は定めておりませんが、小学生が徒歩で通える範囲に居場所があることが望ましいものと存じております
次に、子ども食堂に対する支援策についてでありますが、運営者が設立準備を進めているネットワーク団体の意見交換を通じ、子ども食堂の開設に係る準備経費のほか、運営ノウハウの習得やスタッフの資質向上などの課題を確認しており、市といたしましては、運営者の主体的な取組が促進され、全市に子どもの居場所づくりの取組が展開されていくよう、それぞれの運営者が抱える課題に沿った支援に努めてまいりたいと存じます
次に、子ども未来基金において、子どもの貧困対策に特化した使途を設定し、活用しやすいものとすることについてでありますが、現状におきましても、子ども食堂をはじめとする子どもの貧困対策の取組につきましては、「家庭環境、生活環境等に問題を抱える子どもが安らぎ、又は安心して過ごすことのできる場の提供に資する活動」として、重点化事業に位置付けているところであり、これまでの取組成果を検証するとともに、引き続き、ネットワーク団体と意見を交換しながら、より活用しやすいものとなるよう、工夫を検討してまいりたいと存じます
次に、包括的支援の中核となる専門職員の配置についてでありますが、平成29年度から、子ども未来部に社会福祉及び児童の問題に通じた専門職を配置したところであり、本プランの推進に当たりましては、専門職員を中心に研修を重ね、組織全体として資質の向上を図ってまいりたいと存じます
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