質問 |
答弁 |
国保について ①税の収納率の推移
≪神部伸也≫ 厚生労働省が7月12日に発表した国民生活基礎調査結果(2015年)では、生活が「大変苦しい」27.4%、「やや苦しい」32.9%で、合わせて60.3%にのぼり、過去最高の前年の62.4%からは微減したものの、依然として高水準であることが明らかになりました。この間も指摘してきましたが、国民健康保険税は、他の税や保険料と比べても大変負担の重いものとなっています。それは、所得で計算する所得割に加え、世帯人数に係る均等割や平等割があるため、所得がなくても税金が課せられるという制度となっているからです。負担が重い上に暮らしが大変になり、「払いたくても払えない」という状況はより一層深刻になっているのではないでしょうか。
全国的に国民健康保険事業の運営や財政が厳しくなっているもとで、盛岡市では、収納率の向上対策を行い、近年では、収納率の現年度分・滞納繰越分とも改善されているようであります。法定外の繰り入れについても、平成22年度から26年度まで各年度3億8千万円を投入して保険税値上げを抑えてきましたが、平成27年度は0になりました。国保事業の経営改善という点からは評価できると思います。職員の皆様方のご努力に敬意を表します。改めて、この間の収納率等の推移についてお知らせ頂くとともに、収納率向上対策の取り組み内容とその効果についてどのように検証されているか、お知らせ下さい。特に、「高額案件に対する滞納処分に注力して取り組んでいる」とのことですが、具体的な取り組み内容をお知らせ下さい。 |
≪細川市民部長≫ 国民健康保険税の収納率の推移についてですが、現年度分の収納率が、平成22年度84.8%、23年度85.6%、24年度85.9%、25年度86.6%、26年度87.5%、27年度が88.5%となっており、この5年間で3.7ポイント改善されております。
また、滞納繰越分の収納率につきましては、平成22年度11.1%、23年度10.7%、24年度が17.9%、27年度が22.3%となっており、こちらもこの5年間で11.2ポイント改善されております。
次に、収納率向上対策の取り組み内容とその効果の検証についてですが、滞納金額の上位3割の滞納者で滞納額全体の7割を占めているという実態を踏まえ
①平成26年度に200万円以上の高額滞納者を中心に滞納整理を実施したこと
②また、この事業が、一定の成果を上げたことから、平成27年度は100万円以上の高額滞納者を中心に滞納整理を実施したこと
③具体的な対策としては、今まで積極的に実施してこなかった不動産の差し押さえを平成26年度は120件、平成27年度は53件実施したこと。
④実際には、不動産の換価実績はありませんでしたが、その差し押さえが自主納付につながり、収納率の向上に大きな成果を挙げたこと
⑤これらを着実に実施するため、徴収担当部署において進行管理及び懸念事項解決のための意見交換を定期的に実施したこと
などが挙げあられます。 |
②国保税滞納処分 差押の実態について
≪神部伸也≫さて、いま全国では、国民のいのちを守るべきはずの国民健康保険が、負担が重く払えないことによって、差し押さえで財産を奪い取られ、そのためにさらに生活が困窮するという事態が頻発しているとのことです。
例えは、ある市では、飲食業を経営されている方が、営業不振で税と国保料を滞納し、夜間営業中に、客がいるところに市職員数名が押しかけて家宅捜査を行い、金庫を開けて財布の中から現金を差し押さえるという信じられないことがあったそうです。当然、この事業者は、社会的な信用を失って、経営の危機を招いたそうです。
他にも、差し押さえ禁止財産を一方的に差し押さえたり、生活保護受給者からも滞納税や保険料を取り立てている自治体の実態が告発されています。
こういう「命よりカネ」としか思えないような行政運営は絶対に許されるものではないと思いますが、ご所見をお伺いします。
大阪社会保障推進協議会が厚生労働省保健局国民健康保険課のデータをもとにまとめた資料によると、2014年度(平成26年度)の国保における全国の状況は、滞納世帯数が336万4,023世帯にのぼり、差し押さえ件数は27万7,303件、差し押さえ金額は、943億1,460万3,680円にものぼっています。岩手県では、滞納世帯数が21,409世帯で、差し押さえ件数は3,321件、差し押さえ金額は12億8,869万8,877円となっています。また、同協議会がまとめた「全国都道府県国保差し押さえ率ランキング」では、群馬県が差し押さえ率(差し押さえ件数/滞納世帯数)33.4%でトップ、次いで佐賀県の29.9%、高知県22.1%となっており、岩手県は15.5%で第7位となっています。
2009年度は、滞納世帯数は全国で約445万世帯でしたが、年々低下し、2014年度では、約109万世帯減の約336万件になっています。一方で、差し押さえの推移については、2009年度は、差し押さえ件数18万2,171件、差し押さえ率4.1%、差し押さえ金額約636億7,745万円だったものが、2014年度は、差し押さえ件数27万7,303件、差し押さえ率8.2%、差し押さえ金額約943億1,460万円にのぼり、差し押さえ率では5年前の2倍、差し押さえ金額は1.5倍となっています。当市の実態についてお知らせ頂くとともにご所見をお伺いいたします。
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≪細川市民部長≫次に、「命よりカネ」としか思えない行政運営についてですが、議員からお示しいただいた他都市の事例について把握しておりませんが、国保事業の運営に当たりましては、健康保険の目的を十分認識しながら、できる限り納税者の立場に立った適切な対応に努めるべきものと存じます。
次に、本市の滞納世帯、滞納金額、差し押さえ件数、金額及び差押率の実態でございますが、平成21年度の滞納世帯は8千656世帯、滞納金額35億969万円、差し押さえ件数178件、差し押さえ金額1億1,944万円、差し押さえ率21.1%で、平成26年度の滞納世帯は7千509世帯、滞納金額は31億7,162万円、差し押さえ件数395件、差し押さえ金額5億8,417万円、差し押さえ率18.7%となっております。
5年間で差し押さえ率は2.4ポイント低下しておりますが、差し押さえ額は約4.9倍になっております。
これは、当初行っておりました国税還付金など少額の差し押さえを控えて、高額資産の差し押さえに重点を移したことによるものであります。
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③国保広域化と税滞納処分について
≪神部伸也≫近年の滞納処分・差し押さえ強化は、2018年度からの国保広域化と関係しているのでしょうか。広域化されて国保は都道府県と市町村の共同運営となります。市町村はこれまでどおり、賦課・資格・給付の権限を持ち、実務を行います。都道府県には新たに莫大な国保特別会計が出来て、財政運営が行われることになります。広域化されたもとで、これまで市町村が決めていた保険税は、都道府県が市町村に割り振る「事業費納付金」を、市町村が集めて都道府県に上納する形になります。
広域化に当たって、2018年度以前の累積赤字を持ち込むわけにはいかない、かと言って今の状況下での値上げは難しい、そのために過年度滞納分の収納、つまり滞納世帯への差し押さえによる換価に走っているのではないかと推察いたしますが、この点については、制度的にどうなっているか、当市はどのような状況にあり、どう考えているのか、お伺い致します。 |
≪谷藤市長弁≫ 国民健康保険の広域化と国民健康保険税の差し押さえ強化の関係についてですが、平成30年度から実施が予定されている国民健康保険事業の広域化におきましては、市町村が県への納付金として国民健康保険税を支払うことになります。
広域化後も国民健康保険税の課税権と徴収権は、現在と同様に市町村が担うこととなっており、本市の収納率向上の取組が広域化前と広域化後でかわることはないものであります。
なお、国から示されている収納率基準が、本市の規模では、90%とされておりますことから、広域化が始まる平成30年度の現年度分の収納率の目標を90%としているところであります。 |
④差押財産の種別・換価実態
≪神部伸也≫差し押さえの内容についてはどのようになっているでしょうか。種別と件数、換価金額がどのようになっているか、数年間の推移についても合わせてお知らせ下さい。差し押さえについては、生活必需品や事業に不可欠な物、さらに生活保護費、児童手当、児童扶養手当など差し押さえが例外なく禁止されていますが、その点は守られているでしょうか。給与・年金については、以前に庄子議員が差し押さえ問題について一般質問で取り上げていますが、国税徴収法施行令により、ひと月10万円、生計を一にする親族一人につき4万5千円の加算分を差し押さえ禁止にしていますが、この原則は守られているでしょうか。これを超えて差し押さえている実態があれば件数をお知らせ頂くとともに、承諾書の任意性が担保されているか、お伺いします。
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≪細川市民部長≫差し押さえの種別と件数、換価金額及び数年間の推移についてでありますが、種別が多岐にわたりますことから、過去5年間の年度ごとに差し押さえ金額の多い方から3種類の件数及び換価金額の合計についてお答え申し上げます。
平成23年度は、国税還付金82件、預貯金15件、不動産2件、その他1件で、換価金額の合計は約1,980万円となっております。
以下、平成24年度は、国税還付金194件、預貯金89件、自動車税還付45件、その他14件で換価金額合計は約3,182万円
平成25年度は国税還付金259件、預貯金89件、生命保険67件、その他85件で換価金額合計は約5,211万円
平成26年度は、不動産120件、国税還付金89件、生命保険89件、その他97件、で換価金額合計は約5,311万円
平成27年度は、給料75件、不動産53件、国税還付金32件、その他51件で換価金額合計は約4,967万円となっております。
次に、生活必需品等の差し押さえ禁止財産についてですが、本市では禁止財産の差し押さえは行っておりません
また、国税徴収法施行令に規定されている生活費を超えての差し押さえにつきましては、同居の家族に収入があるようなケースで、本人から承諾書を提出いただいた上で禁止額を超えて差し押さえることが例外的にございますが、承諾書の任意性には十分に配慮しながら行っております。
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⑤「執行停止」の減少について
≪神部伸也≫財産がない方や滞納処分を執行すると生活困窮に陥る方については、「生活困窮者等に対する滞納処分の執行停止」が行われております。当市の実績は、2011年度(平成23年度)は337件・約1億2,100万円、2012年度(平成24年度)は712件・約2億197万円、2013年度(平成25年度)は、509件・約1億6,712万円でしたが、2014年度(平成26年度)は242件・約7,978万円、2015年度(平成27年度)は244件・約5,539万円と半減以下に低下しています。この要因は何でしょうか。制度改正か取り組み内容の変更など何かあったのでしょうか。お知らせ下さい。
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≪細川市民部長≫執行停止の件数の減少についてですが、財産及び支払能力がありながら納税に応じていただけない滞納者につきましては、差し押さえを中心とした滞納処分を実施しておりますが、一方では財産及び支払い能力のない世帯につきましては、徴収を猶予する執行停止を実施しているところでございます。
議員ご指摘のとおり、平成27年度は平成24年度と比較して執行停止件数及び停止金額とも減少しております。
この要因につきましては、平成21年度から平成25年度までの5年間、収納率向上策の一環といたしまして、滞納額全体から収納見込みのない滞納額を減らす、いわゆる分母を減らして収納率を向上させる取組に積極的に取り組んでまいりましたが、一定の効果が上がったことから、平成26年度からは改めて収納額の向上、いわゆる分子を増やす取組に重点を移し、通常の滞納整理の取組を強化したことから、結果として執行停止の件数、金額が減少したものであります。
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⑥東日本大震災被災者への国保医療費の支援
実績と今後の対応
≪神部伸也≫次に、東日本大震災被災者への対応についてお聞きします。
東日本大震災津波被災者への一部負担金の支払い免除措置については、国の財源支援が平成24年9月に打ち切られたものの、県が毎年更新して財政支援を行って継続され、現段階では今年の12月31日までとなっています。この間の実績についてお知らせ下さい。この制度は「被災者の命と暮らしを守る」ものであり、震災から5年5カ月が経過しましたが、文字通り被災者の命綱となっている制度です。現段階で打ち切っていい状況にはないと思います。盛岡市としても継続を要望すべきと考えますが、いかがでしょうか。お伺いいたします。同様に、国保税の減免措置についての実績と市の考えについてもお聞かせ願います。
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≪谷藤市長≫ 東日本大震災被災者への一部負担金免除についてですが、私といたしましても被災者支援策としての継続は必要と考えておりますことから、先日実施されました県からの「平成29年1月以降の一部負担金免除の実施に係る意向調査」におきまして、「生活再建の目途が立たない被災者の生活はますます厳しくなっていることから、引き続き支援を講じていく必要がある」旨回答したところであります。
また、震災に伴う医療費の一部負担金免除についてですが、県事業として現在も継続されており、平成27年度の実績は、469人で、助成額5,045万円となっておりますが、人数はこの数年変わりありませんが、助成額は増えております
国民健康保険税の減免実績につきましては、制度が1年間通じて実施された平成23年度の減免件数が316世帯、2,794万円ですが、平成25年度から福島原発事故による避難者に対象が限定されましたことから、平成27年度の実績は5世帯、21万円となっております。
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⑦一部負担の助成制度について
≪神部伸也≫次に、盛岡市国民健康保険一部負担金助成事業についてお伺いします。党市議団としても何度か改善を求め、今年の3月議会でも鈴木努議員が質問していますが、改めて質問します。この事業は、国民健康保険に加入する低所得世帯へ、医療費の一部負担金を助成する事業です。受診を促して、病状悪化に伴う医療費の支出を抑えるという目的の制度となっています。2013年(平成25年)4月からスタートしましたが、平成25年度は、8件・14万4,140円、平成26年度8件・11万2,220円、平成27年度5件・44,420円という低い実績にとどまっております。3月議会で、細川市民部長は、「28年度中には結論を出したい」と答えた上で、「この3年間こうして見て、周知不足だけではない別の要因があるであろう」と述べて、「使い勝手の悪さ」も大きな要因だと述べています。そして、例えばと前置きした上で、月数や助成方法の改善例を示し、「利用を求めている方々がこれならばぜひ利用して何とか対応させてほしいと思っていただけるような制度の改革の方をまず優先し、その上でもしさらにまだ課題があるようでしたらば、ご指摘のところも踏まえて、改善するべきものを改善していきたい」と答えています。この中の指摘とは、現在の制度対象が生活保護世帯基準以下としているところを基準の1.2倍や1.3倍に範囲を拡大することや、償還払いとなっているところを現物給付にすることですが、改めて、この事業が活用されない要因の分析についての考えをお聞かせ頂くとともに、事業の改善について今後どのようになるのか、合わせてお伺いします。
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≪細川市民部長≫ 次に、盛岡市健康保険一部負担金助成事業についてですが、本市では本事業実施の平成25年度から、事業の周知に努めてきましたが、利用が伸びないことから、その原因について検証を行い、
①申請時に預金通帳の提示を求めることに抵抗があること
②診療報酬明細書の確認後に支払いを行うため、申請から支払いまでに約3か月を要すること
③年間の助成回数2回と少ないこと等が影響しているものと分析いたしました
このことから、申請に際しては領収書のみ確認することとし、診療報酬明細書の確認を省略することで、申請から1か月以内の支払いを行えるようにすること、そして、年間の助成回数を2回から4回に増やすことの3点について改善することとし、本年10月から実施に向けて準備を進めているところでございます。
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⑧国保広域化に向けた対応
≪神部伸也≫都道府県広域化に向けた検討状況についてお伺いします。
現在、広域化に向けて岩手県と県内市町村において協議が進められていると思いますが、現段階での協議状況についてお知らせ頂くとともに、平成30年度の広域化スタートまでのスケジュールについてお示し下さい。特に、3月議会で鈴木努議員が質問しましたが、人間ドッグ受診に対する助成事業など市独自の事業については、広域化後も継続されるとの答弁でしたが、現在、盛岡市の資格証明書・短期保険証の発行については、機械的な発行ではなく、財産調査も行って支払い能力があるにもかかわらず支払わない悪質滞納者に限って資格証明書を発行するとともに、短期保険証の発行についても前年度全く納付のない方に一旦発行しますが、相談などがあれば解除するなど、極めて限定的な対応に改善されています。全国の自治体では、容赦なく保険証が取り上げられて、命にかかわる事態になっているもとで、盛岡市の対応は極めて優れた対応だと思います。広域されたもとでも後退するようなことがあっては絶対になりません。この点についてはどのようになるのかお知らせ下さい。
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≪細川市民部長≫ 次に平成30年度の広域化に向けての検討状況についてでありますが、県では、本年3月に運営方針等検討ワーキンググループを、それぞれ立ち上げ、県で作成する運営方針及び市町村が件に納付する事業費納付金の算定方法等について、協議しているところでございます。
県では今年度中に運営方針を作成する予定としておりますが、その運営方針作成後、平成29年度中に納付金の算定方法や県と市町村の役割分担など具体的な協議を進めるとしております。
市長答弁 次に、国民健康保険の資格証明書・短期保険証の発行基準についてでありますが、先ほどお答え申し上げましたとおり、広域化後も国民健康保険税の賦課・徴収の権限は市町村に残りますことから、広域化に伴う発行基準の見直しを行う予定はないものであります。
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