2016年6月定例会 鈴木努議員の一般質問

 
質問項目 (クリックするとジャンプします)
奨学金について
 ▼返済等相談窓口設置について
 ▼無利子化・給付制奨学金創設について
 ▼返還支援制度の創設を
 
保育について
 ▼保育要件弾力化特別措置について
 ▼保育士人材確保と職場環境改善
 ▼保育士確保の補助金削減の見直しを
 ▼「空き待ち」児童解消を

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 質問  答弁
奨学金について

奨学金返済などの相談窓口の設置

≪鈴木努≫ 奨学金制度についてお伺いします。奨学金制度は、学生の未来と希望を後押しするものでありますが、奨学金をめぐる状況はかつてとは大きく変わり、奨学金という借金が若者の未来を押しつぶす状況となっています。現在、奨学金を借りると、平均的なケースで300万円(月5万円を4年間、入学時の費用)、大学院進学では、多い場合に1000万円もの謝金を背負って社会のスタートを切ることになります。

 総務省の就業構造基本調査では、非正規雇用など不安定雇用が広がり、卒業後の収入が不安定となっており、大学・短大を卒業した30代から50代の3分の1以上が年収300万円未満の賃金で働いています。そして日本学生支援機構のまとめでは、2013年には奨学金を利用する学生が144万人で、その内滞納者が33万4000人となっています。奨学金の返済は、期日から1日でも遅れると滞納利息金が上乗せされ、滞納が3カ月以上続けば、「金融」のブラックリストに載せられます。このような状況の中で、「多額の借金」を恐れ奨学金を借りたくても我慢する学生も増えているなど深刻な事態も生まれています。
私がお話を伺った市内の大学に通う学生からは、「月5万円の奨学金を借り、親からの仕送りもないので、授業のない土日は常にアルバイト。卒業してからは300万円近くの奨学金の返済が始まるので、卒業後がとても心配」、「数か所のアルバイトを掛け持ちしているので大学の講義を受けるのがしんどい」等の声が寄せられました。

 当市でもこのような学生の状況を把握するような調査や奨学金返済などの相談窓口の設置などの対応が取れないものでしょうか、お伺いします。

奨学金の無利子化・給付制奨学金創設について

 奨学金は、1998年から2014年の間に、貸与額で4.9倍、貸与人員で3.7倍に拡大し、いまや2人に1人が奨学金を借りています。大学生協連の調査では、勤労者の所得の減少により、親からの仕送りが月額10万円から7万円に減っています。その一方で大学の学費は上がり続け、初年度納入金は、国立で83万円、私立文系が約115万円、私立理系で約150万円にもなっており、こうした状況のもとで、奨学金に頼らざるを得ない若者が増え続けています。しかし、政府はこのような状況の中でも、有利子奨学金の拡大という「奨学金のローン化」で対応してきました。1984年に「無利子奨学金の補完措置」として導入された有利子奨学金は、当初、貸与額が5%だったものが2014年には、75%となっており、補完どころか主流となっています。有利子奨学金は、最大で年利3%の利子負担が生じます。その場合、貸与額が300万円であれば、85万円もの利子負担となります。奨学金というのであれば、利子はとらない、これが教育行政としての最大限の責任ではないでしょうか。文部科学省も「奨学金は無利子が根幹」としてきました。返済における負担軽減の第一歩は、本来の姿に戻して負担を減らすことです。
 奨学金は、金融商品である「教育ローン」であってはならないと思います。「教育ローン」の対象は親であり、金融機関は借入者である親の所得や資産を査定して融資を決定します。所得も資産もない学生を何百万円もの借金を負わせて利子を取り立てる「ローン」の対象とすること自体そもそも間違っているのではないでしょうか。
 奨学金制度の本来の趣旨からも、無利子化は必要と考えますが、いかがでしょうか、また、現在の奨学金制度における教育長のご所見をお伺いします。
 
 文部科学省が設置した「学生の経済的支援の在り方に関する検討会」も「貸与型奨学金の返還の不安を軽減していくことが重要」としています。奨学金の返済という将来の不安を払拭させるためにも奨学金制度の抜本的な見直しが必要と思います。
 特にも、教育を受ける権利を保障する奨学金は、貸与型から給付型にしていくべきです。現在、先進国(OECD加盟国)で大学の学費があり、返済不要の給付奨学金がないのは日本だけとなっています。世界の中でも最も高い学費でありながら、給付型奨学金制度の導入が先送りされ、先の国会の中でも「ニッポン1億総活躍プラン」で大学生等を対象にした返済不要の「給付型奨学金」の創設について「課題を踏まえて検討する」と明記するにとどめ、導入が先送りされてしまいました。
 
 本来、国民の権利を保障するための奨学金は、借金となってしまうような貸与型でなく給付型とするべきで、経済的な理由から大学で学ぶことを断念せざるを得ない若者を支援していく必要があると思いますが、教育長のご所見をお伺いします。合わせて、国に対しても給付型奨学金を早期に実施するよう求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか、お伺いします。
 
 奨学金返還支援の創設についてお伺いします。若者の定住を促進させるという形で、自治体独自に奨学金返還への支援を行っている自治体が生まれています。寒河江市では、山形県と連携し、将来の担い手となる若者の定住促進のために日本学生支援機構の第一種奨学金を利用し、一定要件を満たす学生を対象として、奨学金返還に対する支援を行い、4年生大学を卒業した場合には124万8000円を上限に支援しています。北秋田市では、市が指定する奨学金を借りて高校または、大学などを修了または中途退学をした人を対象に最大で2分の1を助成しその期間が最大で5年間となっています。また県内でも花巻市で今年から市の奨学金を返還し、市内の認可保育園で勤務している保育士を対象に、奨学金の半額を補助する「ふるさと保育士確保事業補助金」制度が始まっています。
 若者の定住促進や専門職の人材確保など奨学金を利用している学生に安心を与えられる制度として当市でもこれらのような奨学金の返還支援制度の創設を検討していく必要があると思いますが、いかがでしょうか、お伺いします。
 日本の教育への公的支出は、先進国(OECD加盟国)の中で最低水準となっています。政府は、「大学の競争力の強化」などと言いますが、国などの教育への支出が「先進国最低」では、競争力の強化にはなりません。日本の大学教育は、家計の重い負担で支えられてきましたが、それも限界に来ています。政府は、2012年にようやく国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項を受け入れました。高い学費を値下げする方向に踏み出すとともに、奨学金制度を拡充することは、憲法と教育基本法が定める教育の機会均等への国の責任を果たすことであり、日本政府の国際公約でもあります。この条項を守られるよう国に対し、強く働きかけていただくことを要望し、この項の質問を終わります。

≪千葉教育長≫ご質問にお答えいたします。
はじめに、奨学金返済が困難な学生の状況調査や相談の設置についてでありますが、このような学生の調査や相談については、学生にとって身近な大学が対応し、卒業後の返済などの相談については、奨学金事業を行う団体が対応するのが望ましいと存じます。

 なお、市教育委員会に事務局を置く公益財団法人岩手育英会では、奨学金の返済について、随時対応しており、その状況に応じて、返還猶予を行ったりしております。
次に、奨学金制度の無利子化についてでありますが、奨学金制度は教育の機会均等の理念の下、意欲と能力のある学生が経済的理由により、就学を断念することがないようにするための制度であることから、無利子化は必要な制度であり、今後も継続すべきものと存じております。




















  次に、現在の奨学金制度における所見についてでありますが、無利子奨学金、有利子奨学金のほか、独立行政法人日本学生支援機構では、所得連動返還型無利子奨学金制度を平成29年度から実施することとしており、この制度は、意欲と能力のある学生が、経済的理由により、就学を断念することがないようにするための、重要な制度であると存じます。

 次に給付型の奨学金に対する所見についてでありますが、卒業後の返還を心配せずに、学業に専念することができ、卒業後の就職が厳しい中でも、返還に苦しむことなく、将来の生活設計を考えることができるなど、給付型の奨学金制度の役割は、大きいものと存じます。
次に、給付型奨学金の早期実施を国に求めることについてでありますが、これにつきましては、これまでも国に対して、全国都市教育長協議会を通じて無利子奨学金の事業費の増額や給付型奨学金制度の拡充等、奨学金事業のさらなる充実について、要望しておりますが、今後も、機会を捉えて、国に働きかけてまいりたいと存じます。





































≪熊谷公室長≫
 次に、奨学金の返還支援制度の創設についてでありますが、県では、国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に位置付けられている「奨学金を活用した大学生等の地元定着促進」にかかる制度の創設に向け、検討を行っていると伺っております。
また、全国市長会においては、平成28年6月8日に、若者の地元企業への就職・定住につなげるための「地元回帰等に係る奨学金免除制度の拡充」など、首都圏の若者に対する地方への就職支援策の一層の拡充について特別決議し、国の関係機関に要請したところであります。
市といたしましては、これらの動きを注視するとともに、先進事例を把握するなど、調査・研究してまいりたいと存じます。
保育について

  保育要件の弾力化の特例措置について

≪鈴木努≫
 次に保育についてお伺いします。厚生労働省は、昨年12月に保育士等確保対策検討会でまとめた「緊急的な対応方針」をもとに、保育士の資格者配置などを弾力化する特例措置をだしました。この措置にもとづき全国では、年度途中の待機児童が解消されるまでの当面の措置として、特例を設ける条例化の動きが進んでいます。
 この緊急対策の一つの柱は、「規制の弾力化」による「臨時的な受け入れ強化の推進」となっています。
 具体的には、朝夕の児童が少数となる時間帯の保育士の弾力化や幼稚園教諭および小学校教諭の活用、保育実施に当たり必要となる保育士の配置の弾力化です。1つに朝、夕方の児童が少数となる時間帯の保育士の配置の弾力化として1名は保育士資格を有しない者の配置ができるよう緩和をする内容となっています。また、保育士の配置の弾力化については、国家資格である保育士資格がなくても資格者と「みなす」ことができるようにするもので、この措置が条例化することにより対応策が既成事実となり、保育士の処遇改善に逆行するだけでなく保育の質の低下にもつながりかねないものです。
 保育士資格は、こどもたちの成長発達を保障するうえで専門性の高いものです。生まれて間もない、0歳児から入学前までの乳幼児を対象に、それぞれの発達の特徴をとらえ、個々のこどもたちの課題と向き合い、保護者や地域との交流など重要な仕事です。今回の保育要件の弾力化の特例措置をそのまま当市でも実施してくようであれば問題があると思いますが、どのような対応をしていくのか、お知らせください。

保育士の人材確保と働きやすい職場環境について
 
 そもそもこのような配置要件の弾力化ではなく、いまするべきことは、職員確保のための待遇改善ではないでしょうか。労働条件と労働環境の改善なくして保育士の離職に歯止めはかからないと思われます。現在全国では、40万人の保育士が保育園で働いている一方で、約60万人もの潜在的保育士がいるとされています。厚生労働省の調査では、保育士の離職率は公立、私立を含めた平均は10.3%となっていますが、経験年数2年未満の私立では、17.9%に上るとされています。若いうちの離職率が高く、経験年数7年以下の約半数となっており、その一番の理由は「低賃金」となっています。
 厚生労働省の「2014年賃金構造基本統計調査」によれば、全産業の平均月給は29万9600円の一方保育士の月給は21万3000円にとどまり、約8万6000円も低くなっています。また離職理由の2位が「仕事量が多い」となっています。人手を増やすことも賃金アップとセットで進めていく必要があると思います。働きやすい環境をつくれば、潜在的保育士の現場への復帰も増えてくると思いますが、人材確保と働きやすい職場環境のために市長はどのように取り組んでいくのか、お伺いします。

保育士確保の補助金削減の見直しを

 また3月議会で鈴木礼子議員が指摘をしましたが、保育士確保のための補助金を今年度予算において半減しましたが、この補助金の削減は、保育士の処遇改善に逆行するものです。職員確保のためにも見直しを求めますが、いかがでしょうか、お伺いします。










「待機児童」「空き待ち児童」解消について

 最後に待機児童の状況についてお伺いします。この間、当市でも待機児童の解消のために取り組みが進められ、昨年4月1日時点で待機児童が9人、そして今年の4月1日現在で待機児童の解消が図られたとのことでこれまでの市の取り組みについては敬意を表するものです。その一方で仕事を探しながら、保育園への入所を希望するいわゆる「空き待ち児童」の問題がありますが、当市の状況はどのようになっているのでしょうか。またこの「空き待ち児童」解消に向けて今後当市ではどのように取り組まれていくのかお伺いします。
≪谷藤市長≫ 保育要件の弾力化の特例措置に対する対応についてでありますが、市内の保育所においては、保育士の確保に苦慮している状況にあると伺っておりますことから、本市の保育の担い手確保に効果が見込まれるかどうか見極めた上で、対応してまいりたいと存じております。現在、条例改正の判断材料として、パブリックコメントや市内の保育所等の施設長に意見を伺うなどしているところであり、また、他の中核市の対応状況を調査しているところであります。
 いずれにいたしましても、子どもの健やかな育ちには、質の高い保育の提供が重要と認識としており、適切に判断してまいりたいと存じます。






















 次に、保育士の人材確保と働きやすい職場環境の取組についてでありますが、保育園の関係者やこれから働きたい保育士の方の声を聴きながら、市内の保育所で働くために、どのようなころが必要と感じているかなどの状況を調査することとしており、その結果を踏まえ、保育士の人材確保や働きやすい職場環境の構築に取り組んでまいりたいと存じます
 また、保育士の処遇改善につきましては、引き続き、国に働き掛けてまいりたいと存じます。















≪保健福祉部長≫
保育士確保のための補助金についてでありますが、該当する補助金の事業としましては、前年度以上に定員の弾力化に取り組む保育所に補助を行う「保育所定員弾力化推進事業」と、認定こども園に勤務する「幼稚園教諭資格」のみを有する方が、保育士の資格を取得する場合に補助を行う「保育士資格取得支援事業」の2つの事業を行っているところであります。平成28年度は、「保育所定員弾力化推進事業」では、平成27年度の補助実績であります11園を基に、同じく11園で予算を見込んだところであります。また、「保育士資格取得支援事業」は、資格取得後に、継続して1年間保育所等に勤務を行った方に補助を行うものですが、平成28年度に条件を満たす4人を対象に、予算を見込んだところであり、いずれも実績ベースの予算額としたものであります。

≪谷藤市長≫次に、「特定の保育所の空きを待っている児童」の解消に向けた今後の取組についてでありますが、空きを待っている児童は、0歳から2歳児の低年齢児が多いことから、引き続き、私立幼稚園に対する認定こども園への移行の働きかけや、地域型保育事業へ取り組む事業者に対しまして、積極的に相談に応じてまいりたいと存じます。
また、毎月の情報提供において、保育所の空き状況や新規開設のお知らせなどを、引き続き行い、「空きを待っている児童」の解消に取り組んでまいります。
≪保健福祉部長≫次に、「保育所の空きを待っている児童」の状況についてでありますが、特定の保育所を希望したり、保護者が給食活動を休止するなどの理由により、「保育所の空きを待っている児童」は、平成28年4月1日時点で、298人となっております。