質問 |
答弁 |
≪庄子春治≫ 最初に高齢者福祉・介護保険について伺います。
▼高齢者の貧困問題
8月30日の「NHKスペシャル」では『老人漂流社会 親子共倒れを防げ』という番組を放送しました。その番組は昨年9月28日に放映されたNHKスペシャル『老人漂流社会〝老後破産〟の現実』の第2弾でした。「生活保護水準以下の収入しかないにもかかわらず、保護を受けていない」破産状態にある高齢者の現状を「老後破産」と呼び、特集を組んだものでした。
昨年の番組では、独居老人の、3人に一人が「老後破産」と言われる状況にあることを告発しました。そして今年の番組では、子どもと同居する高齢者の間に広がる厳しい現実を紹介しました。今年一月、県内の奥州市で、91才の母親を介護していた64才の男性と母親がともに自宅で亡くなって数日たって発見されたという事例が紹介されました。母親の介護のために仕事を辞め、収入は母親の年金だけ。母親の医療費の負担が重く、公的介護受けるお金もなく、息子が一人で背負っていたなか、自らの体調不良にもかかわらず医療を受けることもなく、息子が突然倒れ、寝たきりの母親が助けを呼ぶこともできず、ベッドからおちて凍死して発見されたという言葉を失うような事例でした。都会で職を失って戻り、非正規で働く45歳の息子と暮らすようになった80歳の男性は、息子と同居したために、それまで受けていた生活保護を打ち切られ、年金だけの収入となり、家賃も滞納し、脳こうそくで倒れた病歴のなか、欠かせない高血圧の薬も満足に続けられないという方の例も紹介されていました。
相対的貧困率は16.1%とOECD諸国中4位という日本。中でも子どもの貧困率16.3%とその対策が急がれていますが、実は高齢者の貧困率は、さらにそれを上回り19.4%(2012年)となっているのです。日本の高齢者の約5人に1人が貧困ラインの122万円以下で生活をしている、貧困者なのです。
厚生労働省の、平成25年度国民生活基礎調査のデータをもとに首都大学都市教養学部の阿部彩教授による「貧困統計ホームページ」によれば、高齢者の中でも特に、「独居世帯」と、「一人親と未婚の子のみの世帯」の貧困率は特に高く、独居世帯では男性の貧困率が29.3%、女性で44.6% 未婚の子との世帯では、男性 23.1%、女性30.2%となっていることが紹介されています。
NHKスペシャルの「老人漂流社会」で取り上げたのはまさにこの統計数字を裏打ちするものでした。
こういう問題がなぜ起きるのか。国民年金満額でも、生活保護基準に満たない貧弱な年金制度、とともに、労働の規制緩和がすすみ、非正規雇用が4割近くにまで増加するなか子どもが安定した収入を得られる仕事に就けないことがこのような現実を生み出しているのはないでしょうか。日本共産党盛岡市議団が今年春に取り組んだ市民アンケート調査でも、暮らしに困っていることの第一位が「年金減少」であり、「国民年金がますます少なくなり、2人合わせても生活保護より少ない」「年金が減り生活が苦しい。少々具合が悪くても医療機関にかかるのを控えてしまう。こんな老後をあじわいたくなかった」・・などの悲痛な声が寄せられているのです。
NHKスペシャルでは、こうした高齢者の貧困対策、親子共倒れを防ぐための施策をしっかり進め、若者の安定した就労につながる支援とともに、必要な高齢者に対しては生活保護をしっかりと受給させることは、短期的には生活保護費の増加となっても、長期的にみると社会を健全な方向に進めることになると指摘しました。
安倍政権の政策は、消費税を増税したのに、社会保障費の削減を行って年金を減らし、さらに「生涯派遣」まま働かせることができるようにし非正規雇用を拡大する派遣法の改悪を強行しました。こうした貧困に一層拍車をかけるものではないでしょうか。
市長は、こうした高齢者の貧困問題についてどのようにとらえておられるのでしょうか。
盛岡市では、市内の高齢者のこうした実態についてどのように把握し、対策を講じようとしているのでしょうか。奥州市の親子共倒れの事例では、SOSを発信することもなくどこからも支援の手が差し伸べられませんでしたが、市の社会福祉協議会でもそもそも、子どもと同居していることから見守りと支援が必要な世帯とは認識していなかったということでした。子と同居する高齢者世帯の貧困問題も今日的な課題として位置づけ、その把握とともに支援の対策を講じるべきだと思いますがいかがでしょうか。
NHKスペシャルでは、子どもと同居することによって生活保護が打ち切られた方が、いつ倒れるかわからないから子どもと別居することができないという状況を報じ、一方東京都のある区では、世帯分離をして親を高齢者施設に入所させて生活保護を受給させるという支援をしている事例が紹介されました。
生活保護への対応・国民年金でも入れる特養ホーム
二つの問題を感じました。
一つは、現役世代の子どもと同居していることをもって生活保護の受給資格を失うことはないのではないか。あくまでも、現状が「健康で文化的な最低限度の生活を営む」(憲法25条)水準の収入かどうかではないかと理解しているのですが、いかがでしょうか。盛岡市の対応はどうなっているのでしょうか。
もう一つは、世帯分離してもお世話になる高齢者の施設があるかどうかです。国民年金などの少ない年金でも入所できる施設があってのことではないでしょうか。
しかも、のちに触れる介護保険の改悪で、特養老人ホームに入所できる対象が介護度3以上に限られるという中、ますます狭き門になっているなか、高齢者が安心して老後を送ることができる施設というのは切実な課題です。こうした施設の確保について、盛岡市はどのような計画もっているのでしょうか。
▼介護保険改悪の影響と市の対策
この4月からスタートした第6期介護保険事業では、私たちは大改悪だと指摘している、利用者への負担増と給付削減のいくつかの制度の見直しがありました。それらについて、盛岡市の実態と対策について伺います。
利用料負担増の影響
まず、利用者の負担増では、介護利用料の大幅な引き上げが2つの方法で取り入れられたことです。
その一つは、低所得者の施設利用者に対する食費・居住費の負担軽減のための補助~補足給付~の要件を厳しくしたことです。今年の7月まで、非課税世帯の方が対象であったものを、世帯分離している配偶者が住民税課税であれば対象から外す、資産が1000万円以下(2人世帯の場合は2000万円以下)であることを預貯金通帳の写しを添付して申請させるという、生活保護の申請などよりも厳しい要件を課したのです。
私のところに、特別養護老人ホームに入所している夫人の利用請求書を紹介して下った方があります。その方の請求は、7月が6万6,815円、8月が13万4,008円と2倍に跳ね上がっています。この方は世帯分離している自分(夫)に「住民税が8,000円かかっているから対象から外れた」と驚き、怒っていました。
この、補足給付の対象は、盛岡でどのように変化したでしょうか。7月まで対象となっていた方のうち何人が対象から除外されることになったのでしょうか。そしてその理由も合わせてお示しください・
もう一つが、一定所得以上の方の介護利用料をこれまでの1割負担から2割負担に引き上げたことです。
盛岡市では、その対象は何人でしょうか。そのことによる、利用抑制が生じていないかと懸念されますが、その実態はどうでしょうか。お示しください。
「要支援」の方への「地域支援事業」への方針
給付の削減では、まず、要支援者サービスの見直しです。要支援1と2の人に対する訪問介護と通所介護を介護保険給付の対象から外し、市町村が実施する地域支援事業に移行するということです。2017年(平成29年)4月まで延期できるという猶予期間が設けられ、盛岡市も実施を先送りしました。全国的にも7割近くの自治体最終年度の実施ということです。なぜでしょうか。市町村の「準備不足」などという次元の問題ではなく、要支援の方の生活を支える重要なホームヘルプ・デイサービスを「住民ボランティア」などに置き換えるという構想そのものが現実を無視したものであることを証明しているのではないでしょうか。国に対して要支援サービスの総合事業化の撤回を求めることが必要ですが、法改正が行われない限り、市がこの総合事業を実施することになるわけです。
その実施にあたって、市はどのような基本方針で臨むのかです。基本的には「総合事業に移行しても現在のホームヘルプ・デイサービスを必要としているすべての要支援者が利用できる」仕組みを作ることが必要ではないでしょうか。
厚労省は、「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」では、移行の参考例として ①「現行相当サービス」 ②緩和した基準・無資格者などによる提供も可能になる「サービスA」 ③ボランティアによる「サービスB」 ④専門職による短期集中予防の「サービスC」をあげ、住民ボランティアへの移行を強く打ち出し誘導しようとしています。
しかし、例えば訪問介護の生活支援は単なる掃除・選択・ゴミだしという行為だけではなくそのことを通じながら利用者の生活を観察しながら生活の質を確保するための支援を行っているのです。生活支援のサービスはだれでもできるとして無資格者の民間事業者や住民ボランティアに任せようというのは、その専門性を無視するものです。市の具体化にあたっては、介護事業者による現行相当サービスを基本にしつつ、多様なサービスは「プラスアルファ」として位置づけるということにするべきではないでしょうか。
市の総合事業への移行を具体化するうえでの基本的な考えと方針について伺います。
もう一つの給付削減は、特養ホームへの入所対象を原則介護度3以上にしたことです。このことによって、盛岡市では、待機者のうち何人が対象から外されることになるのか、その方々への支援はどうするのか伺います。
介護報酬削減の影響
介護報酬の削減も大問題です。介護事業所の経営に重大な影響を与えているのではないでしょうか。介護職員の人手不足に拍車がかかるのではないでしょうか。市内の介護事業所において事業の廃止や休止の実態はどうでしょうか。
健康寿命のばすスポーツ活動
平均寿命に対していわゆる「健康寿命」をのばし医療や介護のお世話になる期間を短くすることが課題とされています。高齢者福祉計画では、高齢者の生きがい活動の推進、高齢者のスポーツ活動を位置づけ、老人クラブ活動への支援や老人スポーツ開会の開催などを謳っています。特にもスポーツ活動は、身体的機能の維持とともにそのことを通じての人とのふれあいなどを通じてメンタル面での健康づくりにも効果があることが実証されています。高齢者のスポーツ活動をどう推進するか。老人スポーツ大会などのイベント開催への支援とともに、日常的にスポーツ活動に取り組むクラブや団体への支援を行って輪を広げる取り組みも有効ではないでしょうか。市内に、構成員が平均年齢で65歳以上というスポーツ団体は何団体あるか、その構成員が何人くらいあるか把握しているでしょうか。
こうした団体に対して、健康増進による介護予防という視点から支援をしてはどうかと思いますがそのお考えはないでしょうか。 |
≪谷藤市長≫
庄子春治議員のご質問にお答え申し上げます。
はじめに、高齢者の貧困問題をどのように捉えているか、についてでありますが、高齢者の貧困は、社会的孤立と密接な関係があり、低所得者、健康問題、世帯構造の変化などが複雑に結びつき、「社会的つながり」が希薄になり、高齢者等が、地域から孤立することが主な要因として引き起こされる問題であると存じております。
次に市内の高齢者の実態把握とその対策についてでありますが、本市では、高齢者の貧困について統計的に把握しているものはありませんが、高齢者の主な収入である年金が年々減額されていることや、65歳以上の生活保護受給者が増加していることなどから、経済的に困窮している高齢者が増加いているものと認識しております。
市といたしましては、本年4月に、地域包括支援センターの増設や人員体制の充実を図るとともに、盛岡市くらしの相談支援室を開設し、高齢者等の支援を強化したところであり、また、盛岡市社会福祉協議会に、地域福祉コーディネーターを設置し生活困窮や就労支援などの相談に、きめ細やかに対応しているところであります。
今後におきましても、地域の皆様の協力もいただきながら、高齢者の貧困の実態把握に努め、子と同居する高齢者世帯への支援を含めた高齢者の貧困対策に取り組んでまいりたいと存じます。
《保健福祉部長》
現役世代の子どもとの同居で生活保護の受給資格を失うことはあるかについてでありますが、生活保護は、世帯を単位として、その要否及び程度を定めるものとされており、世帯の収入等が、医療費や介護費を含めた最低生活費を補えるかにより判断されることとなります。
市においては、高齢者世帯に子どもが同居した場合、世帯員の増加の手続きを経て、世帯の最低生活費と世帯収入等を比較し、要否及び程度を決定しており、保護要となった場合におきましては、保護継続とし、世帯需要に応じた支援を行っているところであります。
次に国民年金などの少ない年金でも入所できる施設の確保に関する計画についてでありますが、今後、高齢者人口の増加に伴い、低所得者向けの施設入所者の増加が想定されますことから、盛岡市高齢者保健福祉計画・第6期介護保険事業計画におきまして、軽費老人ホームへの入所支援を位置付けているところであり、入居需要に安定的に対応できるよう他施設と調整しながら、対応してまいります。
次に、介護保険制度の見直しにより、補足給付の対象はどのように変化したのかについてでありますが、平成27年7月の対象者のうち、8月の利用のために申請した方は1,983人で、このうち、補足給付の対象とならなかった方は131人となっております。内訳をみますと、従来の制度の理由である市民税課税世帯の方が25人であり、制度の見直しによる理由である、世帯が違っていても配偶者が市民税を課税されている方が28人で、預貯金等の資産が一定額を超える方が78人となっております。
次に、一定以上所得があるため介護サービス利用料が2割負担となった対象者についてでありますが、平成27年8月までの介護保険負担割合証の交付者14,630人のうち、2割負担の方は1,675人となっております。
また2割負担となった方の27年7月と8月の居宅サービスの利用状況を比較しますと、サービス利用が1割以上減った方が29%、同程度の方が59%、1割以上増えた方が12%となっております。
まだ、制度の見直しから、時間がたっていない時期でもあり、今後の推移を注視してまいりたいと考えております。
次に、介護予防・日常生活支援総合事業を実施する上での基本的な考え方と方針についてでありますが、市といたしましては、介護予防の訪問介護及び通所介護の地域支援事業への移行に当たりましては、サービスを必要とする要支援者の方に、現行の介護予防の訪問介護及び通所介護に相当するサービスに移行していただくことを基本とし、これにNPO、民間事業者、ボランティア等によるサービスを付加した制度も含めて検討しているところであり、現在、青山地区と見前地区におきまして、地域資源の発掘や課題の把握のため、モデル事業を実施しており、この取組結果を検証しながら、地域の皆様や事業者などの関係者と意見交換を行い、高齢者のニーズに合った制度としてまいりたいと存じます。
いずれにいたしても、介護予防・日常生活支援総合事業への移行につきましては、地区福祉推進会や、市内27か所に設置している老人福祉センターを生かし、十分な準備を行った上、円滑な移行を進めてまいりたいと存じます。
特別養護老人ホームへの入所待機者のうち何人が対象から外されることとなるのかについてでありますが、平成27年3月までに入所を申し込んでいた要介護1又は2の方は、101人となっております。
要介護1又は2であっても、認知症の度合いなど特例入所の要件を満たしている場合には、特例的に入所ができるものとされていることから、特別養護老人ホームでは、要件に該当するか確認を行っているところであり、市としてもその状況の把握に努めてまいりたいと考えております。
要件に該当しなかった場合は、他の高齢者向け施設への入所や、在宅で生活する場合の訪問サービスや通所サービスなどの利用について、きめ細やかな相談に応じるとともに、情報の提供に努めてまいりたいと存じます。
次に、市内の介護事業所の事業廃止や休止の実態についてでありますが、平成27年度上半期に、廃止した事業所が4箇所、休止した事業所が6箇所となっており、人材不足を理由としたものが最も多くなっております。
なお、本年7月に市内の介護サービス事業所を対象に行った実態調査において、介護報酬改定による今後の対応として、事業所の休止または廃止も検討するという回答も寄せられておりますことから、今後においても動向を注視してまいりたいと考えております。
次に、高齢者のスポーツ活動の推進についてでありますが、高齢者の生活を健康的で生きがいのあるものにするため、盛岡市老人スポーツ祭典の開催運営や、高齢者が気軽に取り組めるニュースポーツの普及に取り組んでおりますし、また、26地区ある老人クラブ地区協議会が各地区で開催するスポーツ大会の支援や助成を行っており、今後におきましても、これらの充実を図ってまいります。
次に、スポーツ活動に取り組むクラブや団体への支援を行い、輪を広げる取組が有効ではないか、についてでありますが、地区老人クラブへの活動費を助成する中で、スポーツ活動への支援を行っておりますとともに、各地区において、スポーツ用具の貸与や指導員の派遣を行い、スポーツ活動の広がりにも寄付しており、これらの活動は、健康寿命の延伸に有効であるものと存じております。
次に、65歳以上のスポーツ団体の数と構成員の人数についてでありますが、市といたしましては、正確な把握はできておりませんが、高齢者が加入していると思われる主な団体に伺ったところ、おおむね60歳以上の方が登録している団体数及び加入者数は、ゲートボールは50団体、360人、グラウンドゴルフは、15団体、290人、パークゴルフは、6団体、300人、野球は、3団体、60人とのことであります。
次に、スポーツ団体の活動に対して介護予防という視点から支援してはどうか、についてでありますが、スポーツ活動は健康寿命の延伸に効果があると認識しておりますことから、今後におきましても、スポーツ大会の支援や助成を継続するとともに、ニュースポーツ講習会等の充実を図ってまいりたいと存じます。 |
≪庄子春治≫
次に、雇用対策と地域経済振興について伺います。
まず、岩手県と盛岡市の地域経済に重大な影響を与える
▼TPP「大筋合意」について
TPPについてです。今月6日、交渉が大筋合意しました。その内容は、米の関税なしの輸入枠を米国向け7万トン、豪州向け8400トン設け、牛肉は38・5%の関税を9%にまで段階的に引き下げるほか、豚肉、乳製品でも関税の引き下げを行い、2013年4月の衆参両院における「農産物の主要5品目を除外する」という国会決議に違反するものです。
これが実行に移されたら、米価の下落に拍車がかかることは明らかです、県内でも進む酪農家の離農が進むことも明らかではないでしょうか。そのことも含めて、地域経済への影響を現時点でどのように把握しているでしょうか。
TPPは農業への影響だけではありません、非関税障壁の撤廃ということで食品の安全基準などで、残留農薬の基準や、遺伝子組み替え食品の表示義務なしでアメリカ基準に後退させられることによって食の安全が脅かされることに繋がり、国民皆保険制度の後退にもつながる危険があって医師会も反対しているものです。
安倍政権のTPPへの姿勢は、国会決議を無視して、交渉の取りまとめの旗を振り、国民の安心安全より、アメリカの利益と多国籍企業の利益を優先する暴走と言わなければなりません。TPP協定の調印をさせず撤退させることが必要ではないでしょうか。市長の見解をお聞きします。
さて、安定した雇用の確保の重要性は先ほど高齢者の貧困対策でも触れました。
私は、そのために市としてぜひ検討すべきではないかと考えるいくつかについて提案し伺います。
公契約条例を
その一つは、官制ワーキングプアをなくそうということです。盛岡市も含めて自治体は「財政逼迫」を背景に、公共施設の指定管理制度含む民営化・民間委託を進めてきました。そして、公共事業・委託事業・指定管理者・物品調達も含めて各種事業・サービスの発注価格が引き下げられ、事業を受注する側の経営難とそこで働く労働者の賃金・労働条件の悪化をもたらしました。自治体にとっては短期的にはコスト削減になっても働く貧困層をつくり、地域経済を疲弊させ税収減を生む。そのことによってさらに発注価格が引き下げられるという悪循環になるのです。それを断ち切って好循環に切り替える施策の一つが「公契約条例」の制定です。
企業の保護、育成という観点から企業が健全な経営を維持できるように、入札制度全体の見直しと併せて公契約条例を制定し、公共事業に従事する労働者の賃金水準や労働条件の確保を図るならば、働く人の賃金の底上げを図り、民間企業の業績アップ、税収増という好循環に切り替えることにつながるものです。
改めて公契約条例の制定についてどのようにお考えか伺います。
市職員と外郭団体職員の「非正規」化の現状と対策
官制ワーキングプアをなくするうえで、市役所本体及び、市の外郭団体の非正規雇用の拡大にストップをかけ、正規化を進めることです。
まず市役所本体ですが、この10年間で市職員の総数と、そのうちの非正規職員の割合はどのように変化しているでしょうか。市職員の非正規から正規職員への登用の道はないのでしょうか。既に専門的知識を持ち経験を積んでいる職員を正規雇用とすることができないか伺います。
次に、公共施設の指定管理を受けている市の外郭団体の職員について伺います。それぞれの団体において、指定管理している施設数及びそれに従事している職員数、そのうち、嘱託職員・臨時職員などの非正規職員の数はどうなっていますでしょうか。その職員の非正規のままでの雇用期間はどうでしょう。定年を迎えて再任用や再雇用をしているという方とは別に、中には10年以上も非正規のまま働いているという職員がいるということですが、そのように長期にわたって非正規のまま使い続けているという職員はいるのでしょうか。もしいるのであれば、3年以上、5年以上、10年以上で区分してみてどうなのか伺います。
このような非正規雇用の職員と、正規職員との賃金格差はどのようになっているのでしょうか。公共施設の管理を通じて市民サービスを担っている職員を非正規のままで使い続けるということは大きな問題があるのではないでしょうか。正職員にして、雇用の安定を確保できるように改善すべきではないでしょうか。伺います。
中小企業振興条例を
雇用の場を確保するうえでも、市として雇用対策への支援を強化することです。そのためには市内の事業所の圧倒的多数である中小企業・小規模企業への支援を強化し、共に振興策を進めるため「中小企業振興条例」を作り、全事業所を視野に入れた振興策と支援策を進める必要があるのではないでしょうか。
きめ細かな支援という点で、私はある農家からご意見を伺いました。その農家は定年退職した方や、主婦の方などを雇用して農業経営を行っていますが、農業の振興と併せて雇用拡大にもつながっているという中、市への支援への要望を伺ったところ、「雇用保険加入の事務手数料などの支援などがあれば助かる」というご意見でした。このような支援ができないでしょうか。それらも含めて、各事業所の要望を掌に載せてそれに応える施策をきめ細かに打っていくという姿勢が必要ではないでしょうか。その上でも中所企業振興条例づくりへ、中小企業諸団体に働きかけ、共同で検討をしてはどうでしょうか。お考えをお聞かせください。
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≪谷藤市長≫ 次に、TPP交渉の大筋合意に係る地域経済への影響についてでありますが、当市の農業への影響につきましては、平成25年3月に国の試算を基に岩手県で試算した内容によりますと、県に農業生産額の約37%に相当する約899億円が減少するものと見込まれており、市におきましては、その割合を若干下回るものと見込んでおります。
しかしながら、今回の大筋合意に係る国内の農林水産業に及ぼす影響が明らかにされていないことから、現段階では地域経済に係る影響額の試算は難しいものと考えております。
いずれにいたしましても、TPP協定は、農林水産業をはじめ広範な分野において、国民生活に大きな影響を及ぼすものであり、特にも、産業基盤の脆弱な地方においては、経済や生活などへの影響が懸念されるものと存じております。
次に、TPP協定についての私の見解についてでありますが、国は、交渉内容の詳細や農林水産業に及ぼす影響について、十分な情報開示と説明を行うとともに、必要な対策を早期に明らかにし、かつ十分に講ずる責任があるものと存じますので、岩手県市長会等を通じて要望してまいる所存であります。
また、TPP協定にかかわらず、生産者が将来にわたって意欲を持って経営を継続できることが重要であると考えておりますことから、農林水産業の競争力強化に向けた取組を早期に着実に実行するとともに、食糧自給率の向上に資する関連施策の一層の充実及び強化を図り、持続可能な農林水産業を確立すべきことにつきまして、引き続き国に要望してまいりたいと存じます。
次に、公契約条例の制定についてでありますが、公共工事に従事する労働者の労働条件の確保を図ることは、重要な課題と存じておりますが、労働、賃金対策に関わる全国的な問題であり、各自治体がそれぞれの条例で規制するのではなく、基本的に国が法律で整備すべきものと存じております。
市におきましては、市営建設工事等における設計労務単価の見直しに遅滞なく対応するとともに、最低制限価格制度によりダンピング入札を防止する対策などを講じております。
市といたしましては、公契約条例を制定することの効果について、他の先行事例の運用状況等を引き続き研究してまいりたいと存じます。
《柴田総務部長》
この10年間の市職員の総数と、非正規職員の割合の変化についてでありますが、各年度の4月1日現在で、臨時職員及び非常勤職員を含む職員総数は、平成18年度は2,956人、平成27年度は2,888人、また、そのうち臨時職員及び非常勤職員の割合は、平成18年度は16.98%、平成27年度は21.75%となっております。
次に、市職員の非正規から正規職員への登用の道はないのか、また、既に専門的知識を持ち経験を積んでいる職員を正規雇用とすることができないかについてでありますが、職員の採用につきましては、地方公務員法の規定により、競争試験又は選考によるものとされております。このうち、競争試験につきましては、公務の平等公開の原則に基づき行われるものとされ、また、選考につきましては、職務などの特殊性により、適当な候補者を競争試験によっては得られない場合や、専門的な知識経験を有する職員の育成に相当の期間を要するため、適任者を市の内部で確保することが困難な場合に任期を定めて採用する場合など、その要件が限定されておりますことから、市の臨時職員又は非常勤職員であることを理由として優先的に採用することはできないものと認識しているところでございます
《東藤公室長》
公共施設の指定管理を受けている市の外郭団体が指定管理者となっている施設数、職員数等についてでありますが、平成27年4月1日において、盛岡観光コンベンション協会では3施設、43人、うち正規職員数3人、非正規職員40人、非正規職員の雇用期間は、3年以上11人、5年以上14人、10年以上4人となっております。
同様に、盛岡市社会福祉事業団では、90施設、500人、うち正規職員47人、非正規職員453人、非正規職員の雇用期間は3年以上159人、5年以上102人、10年以上26人
盛岡市森林組合では1施設、3人、うち正規職員2人、非正規職員1人、雇用期間が3年以上の非常勤職員は、おりません。
盛岡市体育協会では、15施設、55人、うち正規職員16人、非正規職員39人、非正規職員の雇用期間は、3年以上7人、5年以上7人、10年以上10人
たまやま振興株式会社では、1施設、25人、うち正規職員5人、非正規職員20人、非正規職員の雇用期間は、3年以上4人、5年以上3人、10年以上6人
盛岡市駐車場公社では、3施設、22人、うち正規職員2人、非正規職員20人、非正規職員の雇用期間は、3年以上5人、5年以上6人、10年以上2人
盛岡市動物公園公社では、1施設、33人、うち正規職員21人、非正規職員12人、雇用期間が3年以上の非正規職員はおりません。
盛岡市都南自治振興公社では、3施設、22人、うち正規職員4人、非正規職員18人、非正規職員の雇用期間は、3年以上2人、5年以上1人、10年以上6人
盛岡市文化振興事業団では、11施設、83人、うち正規職員14人、非正規職員69人、非正規職員の雇用期間は、3年以上11人、5年以上11人、10年以上1人となっております。
次に、指定管理を受けている市の外郭団体における正規職員と非正規職員との賃金格差についてでありますが、平成26年度に実施した指定管理施設に係る労働条件調査結果によりますと、人数が限られておりますことから単純に比較はできないものと存じますが、「1,000円~1,099円」の時給区分から2,000円以上」の時給区分まで分布しております。
一方、非正規職員についても幅広く分布しておりますが、「700円~799円」の時給区分から「1,200円~1,299円」までの時給区分の間に集中している状況であります。
次に、非正規職員を正規職員として雇用することについてでありますが、正規職員として雇用されることは、雇用安定につながるものとは存じますが、外郭団体を含む指定管理者制度導入施設の職員の雇用については、指定管理者である団体の実情に応じて判断されるべきものと存じております。
《志賀商工観光部長》 中小企業振興条例を制定し、全事業所を視野に入れた振興策、支援策の必要性についてでありますが、本市におきましては、市内の事業者は、ほとんどが中小企業であることから、中小企業が地域経済の担い手であるとの認識のもと、盛岡市総合計画において「人が集い活力を生むまちづくり」基本目標に掲げ、事業者の経営力の向上、後継者育成支援、多様なサービス業の育成・支援、新事業創出や起業の支援など、中小企業の振興に取り組んでいるところであります。今後とも、盛岡商工会議所などの関係団体と連携を図り、事業者の声を伺いながら、必要な中小企業支援に努めてまいりたいと存じております。
中小企業諸団体との共同による条例制定の検討についてでありますが、本市は、これまで岩手県中小企業同友会や盛岡商工会議所などと意見交換を行ってきたところであり、その中では、地域社会、地域経済の要として、中小企業が元気になることが必要不可欠であるとの意見や、条例に関する会員相互の意識を深める必要性、他の団体炉の意見交換による市内事業者の共通認識の醸成が大切であるとの課題が出されておりますことから、今後とも、盛岡商工会議所や関係団体との意見交換を継続し、議論を深めてまいりたいと存じております。 |
≪庄子春治≫
次に、学校施設整備について、一点伺います。市立見前小学校には、10年以上前に購入した敷地がそのまま整備もされずにあります。その敷地は一定の面積を持っていますが、そのままになっています。その土地の概要と取得の経過とその後の対応、今後の有効活用についてどのように取り組まれるおつもりか伺います。
このことについて市民の方からの問い合わせもあって市に調べていただいているさなか、見前小学校について大規模改修と併せて、児童センターの整備という案が示されました。この件について詳細なお考えをお聞かせください。学校関係者、地域住民との話し合いと合意を前提に早急に具体化していただきたいのですがどのように取り組まれるのか、伺います。
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≪鷹嘴教育部長≫
見前小学校で購入した土地の、概要と取得経過、その後の対応についてでありますが、購入した土地は、面積が、3,350.78㎡、取得費が2億1,915万9,759円となっております
取得経過としては、旧都南村との合併建設計画に基づき、学校用地の用に供することを目的として、平成7年度と8年度の2か年で、土地開発基金により購入し、平成13年度に、市が土地開発基金から買い戻し、教育財産としたところであります。これまで、取得した土地との境界付近に植えられた桜の木を伐採し、グラウンドとして一体化に活用しようと計画しましたが、桜は地域で大切にされてる木であることや、財政的課題のほか、学校としても差し迫った必要性を感じていなかったことから、未整備となっているものであります。
次に、拡張した敷地の有効活用についてでありますが、見前小学校は建設年度が古く、老朽化が進んでいることから、学校施設の長寿命化を図るための大規模改造を予定しており、この事業に併せて、取得した土地も含めたグラウンド整備について、検討してまいりたいと存じます。
次に、見前小学校に児童センターを整備する案についてでありますが、盛岡市公共施設保有最適化・長寿命化中期計画(案)において、当該小学校と児童センターとの、複合化の可能性を検証し、可能な場合は児童センターを、当該小学校に設置することと位置付けられておりますので、今後、関係部署と協議しながら進めてまいりたいと存じます
次に、具体的についての取組についてでありますが、学校施設の老朽化対策が急がれることから、既存施設の使用状況の確認、児童センターの設置場所や管理運営方法、費用負担のあり方など、複合化する場合の課題を整理し、学校関係者や地域の方の意見を聴きながら、出来るだけ早い時期に実現できるよう、検討してまいりたいと存じます。 |
≪庄子春治≫ まちづくりに関して伺います。
私は今年の3月議会予算委員会で、市街化調整区域における建築許可基準の見直しについて質問しました。
その内容は、黒川地区で、都市計画の区域設定以前に操業していた工場が廃業し、そのうちにその地域が市街化調整区域に編入されたため、その工場跡地を別の業種の事業者が活用して事業をしたいと申請したが許可が下りないという問題でした。
当初市は、都市計画法上同じ業種であれば許可できるが別の業種であれば許可できないという回答でした。市街化調整区域というものが定められた背景はそれ以上の市街化を抑制するというところに主眼があるものであって、既に宅地、工場として操業していた部分が別の業態に変わるということまで法が禁止していないのでないか、市の裁量ではないかとの私の指摘に対しても「できません」という回答でした。しかし、大阪府の八尾市の審査基準には既存工場の用途変更ということが定められていることが明らかとなって、予算委員会での質問となったわけです。
予算委員会で都市計画課長は、「八尾市の場合には、開発審査会基準で、用途が変わった場合でも建てられるという基準を設けているが、盛岡市の審査会基準の中では、調整区域における同一敷地、同一用途のもの以外のものについては認めていない」「審査会の基準については、審査会の委員に諮って決めることも可能だと思う」、そういういう意味では裁量権がないというものではないと認め「盛岡市が参画している東北・北海道地区開発許可及び宅地防災行政連絡会議の中で近隣都市の状況を見きわめ」「岩手県とも相談しながら検討していきたい」と答えたのです。
つまり、同じ法の下で、その運用の基準を定め許可権限を持つ自治体の裁量の違いだということを認めたわけです。
改めて伺いますが、この事例で許可しないことによるメリットは何もないのです。既に宅地になおっており、そのまま工場跡地で放置しておくことは経済的にも、景観や治安の上でもデメリットが大きいのです。一方、それを活用しても、それによって法律が規制する開発の抑制という効果をなんら侵害するわけでもなく、デメリットを解消し、市への税収でもプラスになる。どこにも迷惑をかけることではないのです。
周りを見なくとも、市の判断でできるのではないですか。早急に検討し開発審査基準を見直すべきではないでしょうか、伺います。
最後に、旧市場跡地の整備の中で整備した、津志田ユニバースの裏側の東北線との間の市道について、通行止めが続いています。警察から通行はだめだとストップがかかっているからということですが、改めて正確なその経過をお知らせください。当時の不許可となった障害はなんだったのか。その解消はできないのか、今後の対応について伺います。
以上で 壇上からの質問を終わります。
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《都市整備部長答弁》
盛岡市開発審査会審査基準の見直しについてでありますが、市街化調整区域に廃業した工場等の取り扱いについては、議員ご指摘のとおり、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域とする法の主旨のもと、地域の実情等に応じ、周辺区域への様々な影響等も考慮して判断すべきものと存じておりますことから、今月開催される「東北・北海道地区開発許可、宅地防災行政連絡協議会」に、議題の一つとして当該案件を提出しており、その検討内容を参考とするとともに、岩手県や盛岡広域都市計画区域を構成しております滝沢市及び矢巾町からの意見を伺いながら、盛岡市開発審査会審査基準の見直しや運用の見直しなどについて、今年度末までを目途に検討を進めていくこととしております。
《古山建設部長》 旧市場跡地裏の市道津志田西二丁目4号線についてでありますが、北側の区画街路10号線との交差点から南に約70mの位置と、南側の津志田西二丁目4号線南端部の2箇所でガードレールによる車両通行の禁止の措置を行っております。
当該道路を含めた旧市場跡地周辺の道路網につきましては、平成14年8月に公表した「市場跡地の利用計画」において検討し、これに基づき、15年に策定された盛岡市中央卸売市場跡地利用計画書に位置付けられたものでございます。
一方、公安委員会との協議につきましては、平成17年4月に文書により交差点協議を行い、その際に文書回答では指摘はありませんでしたが、JR東北線野田踏切や川久保線の交差点の安全性等について懸念が示されました。
同年6月には、商業施設の出店が決定したことから、警察より、来店車両が多いと予測されるので再協議を求められ協議を行っておりますが、その際、周辺住民から警察に対して、踏切内安全確保のため、北側の規制を行うべきとの要望があったと伺っております。
この協議の回答につきましては、平成18年1月に文書でありましたが、それによれば、津志田西二丁目4号線の北側交差点付近において、JR東北線野田踏切が近接し、踏切西側から商業施設方面への右折進入車両により、踏切内まで渋滞がおよび危険であること、また、津志田西二丁目4号線の南端部については、川久保線と津志田西二丁目3号線の交差点において、川久保線右折レーンが設置されないことから、北側からの進入車両による渋滞や事故等の危険が予測されることから、現在実施中の対応をとることとされたものでございます。
一方、工事につきましては、平成17年6月ごろから設計を進め、同年11月に契約し、18年11月に完成したものでございます。
今後につきましては、規制が10年近く経過し周辺の開発状況も落ち着いてきており、交通状況等も変化していることから、通行方法の見直しについて、地域の皆様にご意見を伺った上で、改めて警察に相談し検討してまいりたいと存じます。 |