2014年9月定例会 会派の討論

 
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 2014年9月議会最終日、市長提案の各議案に対する日本共産党盛岡市議団の討論を神部伸也議員が行いました。
 まず、今議会に提案された議案及び認定案件のうち、次の4件について反対します

 議案第74号、平成26年度盛岡市一般会計補正予算(第3号)には、マイナンバー制度導入に係るシステム改修の補正予算が計上されています。マイナンバー制度は、国民すべてに番号をつけ、税や社会保障などの個人情報を国が一元管理するものですが、①「納付に見合う給付」の名のもとに社会保障削減と、税や社会保険料の徴収強化の道具に使われる危険があること、②原則不変の一つの番号で個人情報を照合できる仕組みを作ることは、プライバシー侵害や“なりすまし”犯罪を常態化させること、③導入費用に国は3000億円を見込んでいるが、具体的なメリットも費用対効果も示されていない―など問題だらけです。法律では、特定個人情報の提供を原則禁止していますが、例外規定を設け、施行令によって、警察や公安調査庁への情報提供を広く認める危険な仕組みとなっております。よって、マイナンバー制度は導入すべきではありません。
 また、平成27年度から二輪車、小型特殊自動車等及び新車四輪車等の軽自動車税が増税となり、そのための税賦課システムのプログラム改修費が増額補正されています。本年6月定例会で述べた通り、軽自動車は「庶民の足」であり、消費税増税に加えての二重の市民への負担増であり反対です。

 今補正予算には、今回も、資材単価・設計労務単価の高騰による補正予算が計上されています。この間、私たちの提案を受けて、元請け業者に対して、「公共工事設計労務単価の引上げ等に関するアンケート調査」を実施したことは評価いたします。今後においては、①設計労務単価に見合った賃金が支払われるよう改善を求める対策を強化すること、②元受けの「適正管理」が求められることから、市として、引き続き、下請け業者の実態についても調査を行い、未払いの根絶と低賃金の改善に取り組むよう求めます。

 認定第一号、平成25年度盛岡市一般会計歳入歳出決算については、国の制度改悪によって地方交付税が削減され、生活保護支給費の削減と職員の給与削減が強行されたことは認められません。平成25年度末の財政調整基金残高が、95億5700万円となりましたが、2年間29億3千万円積み増した一方、例えば就学援助費の3項目(PTA会費、クラブ活動費、生徒会費)の追加については冷たく見送ったほか、学校の雨漏り対策をはじめとした施設修繕も限られたものにとどまっているのです。昨年度は、地域の臨時元気交付金によって一定進んだものの、財政運営については有効活用によって市民サービス向上に取り組むべきです。「枠配分」にとらわれた、財政運営の弊害が現れているといわざるを得ません。以上の理由で本認定に反対します。
また、市が事務局を務めて協議してきた、県央ブロックごみ・し尿処理広域化基本構想(案)についてもここで意見を述べておきます。

 岩手県ごみ広域化計画は、15年前の厚生省通知「ダイオキシン削減対策」に基づき策定されたもので、広域化してダイオキシン削減の発生が少ない大型の焼却炉で処理することでした。しかし、岩手県ではすでに平成15年にはダイオキシン削減目標が達成済みとなっているものです。
 現在、県内で広域化が実施されているのは、沿岸中部ブロック (釜石市が溶融炉建設時に実施)・沿岸南部ブロック(広域化計画以前に実施)、唯一、中部ブロック(花巻・遠野)が平成27年度に稼働予定で、県南、県央ブロックは基本構想の策定段階です。県北ブロックは九戸町を除き参加自治体の議会で事業の中止、広域処理組合の解散を議決しています。
 これらの経過からは、岩手県ごみ広域化計画自体がその主要目的を失い破たんしており、計画の中止を含む根本的な見直しこそが求められています。
 県央ブロックごみ・し尿処理広域化構想(案)は、破綻した岩手県ごみ広域化計画をベースに、ごみ処理の効率化が依然として必要だとしたが、むしろ燃料費の高騰による収集・運送コストの上昇、運搬車の集中による環境負荷の増大、ごみ分別・収集の不統一による減量・資源化の停滞などが懸念されるものです。
 「効率化」の推進では、人員・経費の削減のみが強調されているが、ごみ処理の効率化で最も重要なことは、ごみ減量・資源化の推進であり、広域化計画が示すごみ処理を担当する事務組合と減量・資源化に取り組む自治体とが分離されることこそごみ処理全体の効率化を阻害するものです。
 ごみ処理は、自治体が責任をもつ自区内処理が最も望ましいやり方であり広域化基本構想(案)には反対します。

 平成25年度は、盛岡市では、8月9日豪雨災害に続き9月16日の台風18号によって、これまでに経験したことのないような甚大な被害を受けました。市は、国の被災者生活再建支援制度に準じた支援や、つなぎ温泉に対する県と市の独自支援、国の補助とならない農地復旧に市単独補助を当初の63%から75%に拡大するなど実施したことは評価いたします。平成25年度の経験・教訓を今後にいかすとともに、最近の広島県の土砂災害対策など全国の経験も踏まえた防災対策の改善を求めます。危険個所の見直しや警戒区域の指定、ハザードマップの作成・見直しなどを急いで行うとともに、関係機関との連携を確立した「タイムライン」の手法による防災対策の充実を求めます。

 認定第6号、平成25年度盛岡市介護保険費特別会計歳入歳出決算については、第5期介護保険事業計画で保険料の大幅な値上げがされた一方で、特別養護老人ホームの待機者数は1,234名と施設整備は立ち遅れており、必要とされるサービスが受けられない状況にあり、本認定に反対します。
次期介護保険事業計画では、施設整備を急ぐとともにニーズの高い多床室の整備を進めるよう求めるものです。また、昨年度、市で行われた介護認定調査の更新によって全体の21.8%の方が軽度と判定されました。全国平均の13.5%、県平均の11.9%と比較しても高い状況となっています。軽度と判定されたことにより必要なサービスが使えなくなったり、これまで利用できたサービスが利用できなくなってしまうような状況が生まれています。なぜ、軽度と判定される人が大幅に増えたのか、認定調査について問題がなかったか検証するとともに、その人の実情にあった適切な認定がされるよう認定調査の見直しをするよう求めます。包括介護支援センター7か所のうち6か所が国のガイドラインの基準である65歳以上の高齢者人口の基準6000人を大幅に超える状況にあり、その増設を求めます。

 認定第7号、平成25年度盛岡市後期高齢者医療保険費特別会計歳入歳出決算については、後期高齢者医療制度は、高齢者を年齢で区別し、差別医療と負担増を押しつける制度であり、制度そのものに反対です。短期保険証の発行については、国民健康保険と同様の取り扱いとなるよう改善を求めます。

 他の議案、認定案件については次の意見を付して賛成します。
議案第79号「盛岡市空き家等の適正管理に関する条例について」は、この条例で規定している空き家に対する市の措置については、個人の財産権にも一部踏み込むことになり、運用を厳格にする必要があります。「特定空き家」の判断基準については、明確な規定を設けて運用するよう求めます。

 議案第77号及び議案第81号から86号までは、「子ども・子育て関連3法」に係る条例提案です。国の「社会保障と税の一体改革」の一環として「子ども・子育て関連3法」の成立を受けて、「子ども・子育て支援新制度」が平成27年度からスタートします。新制度は、現行保育制度の施設補助方式と市町村の責任による入所・利用の仕組みを、介護保険法や障がい者総合支援法のように「利用者補助方式」と「直接契約方式」に変え、保育の公的責任の大幅な後退と企業参入を容易にするものであり到底容認できるものではありません。
しかし、今回提案された条例案は、市が新制度による実施主体として、幼保連携型認定子ども園や家庭的保育事業等の乳児室の設置基準、職員配置基準や屋外遊戯場の必置など、国基準を上回る内容で現行認可保育園と同等の基準としたことは評価します。保育の質を十分に確保するとともに、来年度の待機児童ゼロに向けて取り組みを進めるよう求めます。

 また、放課後児童クラブについては、法制化されたとはいえ公的責任があいまいであったため、子どもが安心して過ごせる環境や条件が極めて不十分でした。「子ども・子育て支援新制度」により地域支援事業に位置付けられ、「量的拡大」と「質の改善」について市の実施責任が強化されたことは大きな前進であり関係者の期待も大きいものとなっています。条例案は、専用区域の面積や集団の規模など「当分の間」適用しない規定になっていますが、移行期間を明記するなどしっかりした対策を講じること。また、今年度、「子ども・子育て支援新制度」の先行的な措置として内閣府が予算化した「保育緊急確保事業」は、“小1のカベ”解消と「質の改善」の一助として児童クラブ指導員の待遇改善を図るものであり積極的な活用を図るよう求めます。

 認定5号平成25年度盛岡市国民健康保険費歳入歳出決算については、昨年度から導入した「低所得者への医療費助成事業」において、200万円の当初予算に対して決算額が14万4140円にとどまってしまいました。せっかくのこの制度が生かされるよう改善するよう求めます。

 最後に、本日明らかになった県市民税、国民健康保険税、後期高齢者医療保険料の還付加算金の支払い不足については、決算認定にも大きくかかわる事件でありながら、審査が終了してから議会に報告するという非常に不誠実な対応であったといわざるを得ません。早急に還付手続きを進めるとともに、この際、市の事務処理につき、このような問題がほかにないか、精査して再発防止にあたるよう強く求めます。